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ラ・ブリギュから家に向かう道すがらイタリアとの国境すれすれにある人口たった444人のサルジュ(Saorge)という村に立ち寄った。国道から見上げるこの村の佇まいに声をあげない人はいない。無骨に切り立った岩の斜面に必死でしがみついてるような様相の小さな村。地震などきたらひとたまりもないだろう、と日本人なら誰もが想像してしまうのではないか。村の中は石段とトンネルの小路ばかりなので車は通れない。村の入り口に車を停める。
″Super medieval!!!"
村に足を踏み入れるや否やスパニッシュ・ボーイズが声をあげる。1世紀から人が住みついたこの村は15世紀に大火事で大方焼けてしまい、その後改新も含めて再建された。そして恐らくそれ以来変わっていないのだろう。デコボコの石の小路、平衡感覚を失ってしまいそうな傾いた家、入口が暗い洞窟みたいなトンネルの中にある家、村全体がブロカントのようだ。おとぎ話の中に紛れ込んだような気になる。
良い匂いに釣られてそのまま入ったイタリアン・レストランでランチを摂る。オフ・シーズンで他に客はいない。3人ともPlat du jourにする。すぐにオリーブ、サラミとグリッシーニを持ってきてくれる。みんな腹ペコでお通しを貪っているとすぐにヒッピー風の女主人が前菜を運んでくれた。メニューをよく読まなかったせいで前菜がでてくるとは知らなかったので素敵なサプライズだった。
「このチーズに巻かれたサラミはね、この辺りの古い食べ物なのよ。第二次世界大戦中に村が占領された時、肉は全部取り上げられたの。だからこの村の人々は見つからないようにチーズの中にこうやって肉を隠して保存したのね」
なんと逞しいこと。この岩の斜面に必死でしがみついているような村の様相とそこに暮らす人々のイメージがぴったりと重なる。わたし達はほぉ、ほぉ、とひたすら感心しながら女主人の話を聞いた。1世紀、この村に最初に住み着いたのはリグリア(現在:イタリア)の部族。それからサヴォイ、ピエモンテ・サルディーニャに属し、19世紀についにフランスに属すようになる。よって第二次世界大戦中ここはフランスで、村を占領したのはドイツ軍だ。戦後1970年代にはヒッピーが多く住み着くようになり、政治的にもかなり左に偏った村となる。
3人中2人は肉は食べないのだが、ここでそんなことは言わないほうがいいだろうと無言で目配せして、フォークとナイフを持ちわっしわっしと平らげた。メインはナスとパルミジャーノのトマト・ソース。これは自分で作ったやつのほうが美味しいと思った。デザートはティラミス。すごくリキュールの利いたユニークな味と食感だった。カフェを摂って、最後にリモン・チェロを出してくれた。これで一人20ユーロ弱。悪くない。大満足でレストランを後にした。
村を練り歩く。石が敷き詰められた小路は歩きにくくその上坂が多いのでちょっと歩くだけで良い運動になる。
いいね!(親指)
自分が傾いてるのか家が傾いてるのかわからなくなる。
こんな暗い洞窟のようなトンネルが通路となっている。
今日の相棒のスパニッシュ・ボーイズを思わせる猫。片方は遊ぼうよ、遊ぼうよ、と誘うのだが、片方はシエスタしたまま動けない・・・そっくりだ。
オリーブの木に混じって歴史の浅さを思わせる細い桜があちこちで開花し始めている。1週間後に訪れたらより一層綺麗だっただろう。