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2017年10月17日(火) |
Nous sommes gourmands |
アナとイタリアへ買い物に出かけた。彼女はこちらへきて初めてできた友達といえよう。チュニジア生まれフランス育ちの肌の浅黒い人で、町ではまず見かけない有色人種。だから親しみが湧いたのか、はたまた美味しい物が大好きという共通点のせいか食事会で会って以来何かと誘ってくれる。山道をくねくねとドライブする。朝陽に照らされた山の景色は神々しい。山を抜けて海沿いにでる。夏のヴァカンスの時期には大渋滞すると言われる海岸線の道路も平日は静まり返っている。ヴァンティミーリア(Vintemillia)の市場も静かだ。こちらに来てから野菜の味や特質の違い、料理する水の違い(水道からコントレックスがでてくるような硬さ)でまだいまいちこの風土に合った美味しい手料理を作ることができていない。アナに美味しい食べ方を教わりながら野菜を買い込んだ。
ランチはパスタ!と意気投合し、海辺の適当なレストランに入った。プッタネスカ二つとティラミス二つ。イタリアに来たらパスタ、それもトマトソース、そしてティラミス。これだけは間違いない気がする。この意見は賛成票を得るのは難しくない。日本でもティラミスとかジェラートと名の付くものは食べられるが、本場の物とは別物だ。工程ではなくもうミルクの味が違うのだろう。どういうわけかパスタは日本の軟水でもこちらの硬水でも美味しく作れるように思う。
海沿いをフランス側に向かって走る途中、国境付近の検問所からとぼとぼと引き返してくるアフリカ系移民を見た。
「彼らはなんとかイギリスに辿り着く道を探しているんだけど、結局検問所を通れずここでひもじい思いをしながら暮らすの。あぁ、可哀そうに」
フランスで育ちフランス人と結婚して食事ごとに酒を飲むアナはチュニジアにいる祖父母にとっては"モダン過ぎてついていけない"存在らしいが、それでも自分の祖国を思う気持ちは強い。ムスリムの家庭の娘だということで大っぴらでなくても差別を受けてきたのだろうし、服装や立居振る舞いからどう見てもフランス人であるアナは検問所で止められたリすることはないが、肌が黒いというだけで呼び止められる同じアフリカ出身の同胞を見て他人事とは思えないのだろう。
美味しい物とダンスが大好きで、いつ会っても楽しげで、それでいて情深いところがあってとても好感の持てる人だった。せっかく仲良くなったのに、うんと年上の旦那さんがリタイヤするのでプロヴァンスに購入してあった家に引っ越していってしまう。
「小さな庭もあるから野菜作るの。ほど良いサイズの美しい町よ」
もっとちゃんとフランス語が話せるようになったら、電車に乗って会いに行こうと思う。