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酒を辞めたきっかけは、ある人とのデートだった。相手は一つを除けばもうパーフェクトな人だった。物静かで、知的で、背もスラリと高いブリティッシュジェントルマンで、読書と映画という共通の趣味でいくらでも話していられた。数回デートを重ねれば距離が縮まるのも当然だが、それにつれて、相手の口臭や体臭が鼻につくようになっていた。たまたま体調の悪い日というのはあるが、そうではなく会うたびに同じ匂いがした。一緒に食事をするとわたしよりも余程健康的なチョイスをするのだから、匂いの原因は老化と飲酒としか考えられなかった。大酒飲みではないが、仲間と会えばワイン2、3杯は飲むらしかった。
彼との今後についてとても悩んだ。匂いが嫌だといって辞めるなんて、人として未熟なのだろうかと思う一方で、もう性的興味が全く沸かないのだから、無理だろうとも思えた。友人達に相談すると、男女ともみんな口を揃えて、″匂いがダメなら無理だ″と言う。
数週間悩んで、彼とは友達として付き合うことで合意して(意外にも数か月経った今でも交流している)、同時にわたしも酒を辞めた。気をつけなくても匂わないのは20代くらいまでで、30代くらいからは匂いには気をつかうべきだ。加齢臭に不摂生と喫煙や飲酒の匂いが混ざっているなんて最悪だ。アルコールは腸内の善玉菌を殺してしまうのだそうだ。悪玉菌が増えるということは全ての不健康の元凶になるだろう。″酒を辞めた″というのは、足がふらついたり、その後のことをやりたくなくなるまで飲まないという意味で、食事と一緒に味わう程度のおちょこ一杯、ワイン一杯は飲むが、それも週1回くらいになった。代わりに養命酒を飲むようになったのだが、これがすごい。冷えがなくなって、夜の寝つきもいいし、何より生理痛と生理そのものが軽くなった。
職場の若いコが近寄ってくると、グリーンアップルのような良い匂いがする。さすがにそれはわたしには難しいだろうが、努力をしなくなったら、それは精神的に末期の病なのだろう。
「もっとも重い病気は、己のからだに無頓着でいることである」
とはフランスの哲学者モンテーニュの言葉だ。