My life as a cat
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2014年06月21日(土) How Starbucks saved my life - Michael Gates Gill

これを読んでスタバに走る。これは至って通常の人の反応だろう。いや、最初からスタバでゆっくり腰かけて読むのが正しいのかもしれない。コーヒーとミルクバタービスケットを買って本の続きに没頭した。

これは実話。ニューヨーク、アッパーイーストの上流階級育ちのマイケルはイェール大学を出て広報としてJWTに仕え、家族との時間を犠牲にして会社と仕事に忠誠を誓いひたすら働いた。全てが順風満帆で彼の自信をへし折るような出来事は何一つなく、大々的なアカウントのエグゼクティブにまで登りつめた頃には傲慢な中年男に成り果てていた。それが50代で突然かつて自分が出世を世話した小娘に解雇を言い渡される。アメリカのまともな利益をを出す企業では、エグゼクティブだろうと、何年会社に尽くそうと、過去に良い実績があろうと、老いて時代の流れを読めなくなればポイッと捨てられる。まさに″行き過ぎた資本主義″とはこういうことを言うのだろう。一瞬にして転落した彼はその後10年くらいは、どんないきさつにせよいい年で一線を退いた人の典型のような″企業コンサルタント″として地道に働いたが、このビジネスもパッとせず、さらには魔がさして不倫に走り、相手との間に子供まで出来てしまい、離婚する。アラ60で普通に″子供ができた″なんていうのもすごいけどね。やっぱり欧米人強し。挙句の果てに脳腫瘍が見つかった時には、すでに手術代どころかコーヒー代すら心配になっていた。

そんな時、たまたま立ち寄ったスターバックスで就職フェアが開催されていた。ぼんやりカフェオレを啜るマイケルの耳にこんな言葉が入る。

″Would you like a job?″

我にかえると若い黒人女性が顔を覗き込んでいる。頭が真っ白になった彼は思わず口走ってしまう。

″Yes″

こうしてホワイトカラーから完全にブルーカラーに転身。かつて蔑んできた若い黒人女性の下でコーヒーを売ることになる。

そこは完全に彼が生きてきたのとは別世界だった。スラム育ちの若い黒人の″Partner" 達の日常はドラッグと暴力に晒されていた。彼らがスタバで真面目に働き大学を出てもスラムで育ったという事実は社会に受け入れられがたい。その″社会″とはまさにかつてマイケルのような一部の裕福な白人が取り仕切っていた場所だった。彼はかつての自分の傲慢さを深く反省する。そして次第にそこに自分の居場所を見つけていく。

上流階級の出でもないし、学生の時にコーヒーを売ったりしたこともあるし、ブルーカラーの職に就くことを″転落″と思わなくて済む家庭環境にあるわたしにはマイケルの日々の気付きなどさほど感じ入るところもないが、希望を失った老人が生き甲斐を見つけていくという話は単純に嬉しい。何よりもコーヒーの発祥や歴史、スタバの名前の由来などの話も興味深い。

全体的にアメリカ臭のぷんぷんする物語だが、このスタバのレジ閉めでは個人がプラスマイナス5ドルま誤差が許されるらしいのだが、彼は2度5ドル以上の誤差を出し、注意され、集中したら3セントしか誤差がなかったなんて喜んだりするところは誤差が出ないのが″当たり前″の日本からすると解せない。

しかし、マイケルの働くスタバではホームレスがトイレだけ利用しに来ても、店内に入ってきた人は皆大事なお客様としてもてなすのだそうだ。ヨーロッパのスタバも見習ったほうがいいね。パリのスタバなんて、鍵がかかってて、レシートを見せないと鍵を渡してくれなかったりする。


Michelina |MAIL