My life as a cat
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2014年02月15日(土) Little Director

楽団のコンサートのお手伝いへ。団員の中に仕切り役がいるものの、演奏もあるのでせわしない。結局ボランティアスタッフを仕切ったのは、団員の12歳の娘さんであった。

「わたしは今まで22回コンサートに来てるの。お手伝いは3回目だけどね」

と得意気だ。22回ということは、コンサートは年に2回だから生まれてこのかた一度も欠かさず来てるということなのだね。継続は力なりというものね。それだけでも見上げたものだ。彼女は受付で手際よくチケットを販売すると、わたしにもぎったチケットの半券を数えるように指示をだし、それを帳簿に書き記すと、さっさとスーパーボールで遊びはじめた。

大雪の影響で客入りは乏しい。開演されると彼女と駄弁る以外もうやることがなくなった。

今年は受験があること、本があれば友達などいらないと思っていること、初めて読んだのはベートーヴェンの伝記ですごく好きになったこと、女の子達の恋バナをばかばかしいと思っていること、離婚という失敗をするくらいなら結婚などしたくないこと、、、、あまりにもドライでぎょっとしてしまったが、思えばわたしだって協調性がなく、無理に人のペースに合わせるくらいなら本を読んでるほうが好きだった。でも人は変わる。この子だっていつか誰かと共に過ごすことに価値を見出す可能性は大だ。しかし、12歳というのはそれが善悪かという結論とは結びつかなくとも、自意識はしっかり形成されてるのだろう。さらにそれをきちんと声に出せて、大人ときちんとした会話を成り立たせることができる彼女はとても聡明な子なのだろう。子供らしい一面もあって、将来何になりたいのかと尋ねると、目を輝かせて、「漫画家!」と答えた。しかし更にその先は現実主義の彼女らしい。

「大学は行きたくないし、両親にその経済力があるかもわからないから、高校生になったらコンクールなんかに応募して、入賞すればチャンスが掴めるだろうと思ってるの」

すごい、もうそこまでちゃんと人生設計があるのだね。よし、ここはひとつわたしも立派な大人としてアドバイスのひとつもあげなければ示しがつかぬ。

「でも美大とかに行けば、優れた人が沢山いて、良い刺激を受けて、もっともっと可能性が大きくなるかもよ」

と言ったらすかさず、

「じゃぁ、どのあたりの大学がいいと思う?」

と切り返された。さすが、ぬかりない(汗)。

裏方はこの愛らしい小さな指揮者が取り仕切っていたが、コンサートの指揮者は小澤征爾さんに推薦を受けるようなとてもビッグな方らしい。窓の向こうの暗闇にぼんやりと青く浮き立つ雪景色、ホールから漏れるブラームスが心地良い時間を運んでくる夜だった。


Michelina |MAIL