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2013年10月06日(日) |
こんなにも大人になっていた |
心が大きく揺さぶられた一週間だった。毎朝測っている体温が月曜からおかしい動きをしはじめた。避妊はしているが、100パーセントはない。もしかして、と不安になり始めた。こんな時、不安を和らげてくれるかもしれない相手は、またもや海外出張に出ていて、夜にほんの数分チャットするのがやっとで、会話らしい会話も持てなかった。水曜の午後になっても生理がこなくて、その夜心を決めた。何がどうであれ、もし新しい命を授かったのなら一人でも育てよう。
ところが、木曜の夜、生理がやってきた。一度心を決めたものの、新しい命はちゃんと心の準備の整った人々のところにやってくるほうがいいに決まっている。ほっとしたのも束の間、今度は過去のボーイフレンドから電話がかかってきた。東京に来ているので会いたいと言う。関係を成り立たせようと必死に真剣に向き合った人ほど、その努力が報われなかった時の落胆が大きく、後からはもう二度と蒸し返したくない。別れた後も平然と友達のようになれるのはさほど真剣にならなかった相手だけだ。彼との関係は一番幸せで一番辛かった。ただただ懐かしい思い出だと笑って会えるようになるにはあと10年くらいは要るのではないかと思う。わたしの中では完全に″過去″だが、傷口はまだ膿んでいる。相手はまだ小さな望みを抱いていて、それがあまりにも心苦しかった。心を鬼にして、もう別の相手とデートを重ねているのだと告げた。勿論その相手はもうすぐ去ってしまうなんてことは伏せて。電話の向こうでみるみる声のトーンが落胆していくのが伝わって、苦しくて涙がぽろぽろと出てしまった。
日曜の午後、カミーユ君が成田に着いて、銀座で落ち合った。長いフライトの後でさぞかし疲れているのだろうが、家に戻ってシャワーを浴びてきたようで、フレッシュないい匂いがした。一週間の出来事を全て話して聞かせた。
自分一人でも育てようと思った。貯金をチェックして苦しいとも思ったけど、いざとなったらあなたに経済的支援を頼もうと思った。でも一人でも育てるなんて言って満足してるのは自分だけで、子供の立場を考えたら単なるエゴなのだろうかと悩んだ・・・・・
などと。最後まで黙って大人しく聞いていたカミーユ君があまりにも自然にぽつりと言った。
「っていうか、そうなったら一緒に育てるけど」
えっ?思いもよらなかった言葉に思わず立ち止まってまじまじと相手の顔を見てしまった。そしてハッとした。なぜ、相手が無責任に去って行ってしまうと決めつけていたのだろう。相手は37歳。立派な大人で、もう無闇に遊びほうけたり、体だけの関係を楽しんだりしているわけではないだろう。考えてみればわたしも同じだ。いざとなったら責任を取れるような関係しか結ばない。彼とは年が同じせいだからか、学生の時の同級生と話しているような感覚になって童心に返ってしまう。同じ年で、同じ映画を観て、同じように夢中になって。しかし、わたし達は大人だ。そんなことに初めて気付いて、なぜか、自分の好きになった″男の子″は立派な″大人の男″だったのだと急にひとまわり大きく見えた。