DiaryINDEX|
past|
will
早朝、ひとめぼれ君と上野で再会。朝、新幹線で東京まででてきて、わたしとランチを摂って、成田に向かう予定だ。マーケットはオープンしているものの、まだ閑散としているアメ横を歩いて、次回日本に来るのは3ヶ月後になってしまうけれど、今回の滞在中に日本の大学と交渉して夏の間3ヶ月ステイできることになったこと、来年も沢山来る機会があることなどを告げられた。
「ここに住めばいいじゃない」
と言ってみたけど、やはりローカルと外国人の間に大きな溝がある日本の職場をレギュラーでやっていくのは精神的に難しいのだそうだ。
アメ横マーケットの中の刺身丼のお店の前で彼が立ち止まり、食べてみたいというのでそこでランチにすることにした。そこで彼が学生の時にアラスカで漁師のアルバイトをした話を聞いた。給料はいいけれど、命掛けの危険な仕事だ。それでも獲れた魚をすぐにその場で食べるのは格別で、なかなか楽しんだということも。海外でいつも感心するのは殆どの学生が自分で学費を捻出して勉学に励んでいることだ。だからみんなちゃんとよく勉強する。彼が教養があって頭脳明晰なのは一目瞭然だが、そんな苦労までしてドクターを取得したとは知らなかった。片手が不自由でも単身アメリカに渡り、生活が苦しくて誰もやりたがらない危険な研究をするしかないという出だしだったものの、寝る間も惜しんで研究に励んだ野口英世のストーリーを思い出した。
カフェで食後のコーヒーを飲み、昨日焼いた抹茶とチョコチップのクッキーを渡すと彼が妙に嬉しそうな顔をして、
「外国人向けの新聞で読んだの。日本の女の子は好きな男の子には手作りのお菓子をあげるって」
そうなの???別にそんな気もなかったが、彼がとても幸せそうだったの"そうかもね"と言っておいた。
別れの時間が刻々と迫った頃、話題は"結婚"になっていた。これがまずかった。彼の口から、
「結婚なんてものをしたがるのはほぼ人間だけだし、一夫一妻制も動物学的には不自然なんだよ」
などという発言が飛び出し、それは思いもよらずわたしに大打撃を与えた。
「そんな発言聞きたくなかった。わたしは少なくとも、絶対に結婚はないだろうと思うような男性と旅行に行ったりしません」
そう言ったところで、時間になってしまい、別れた。
帰りの電車でじっと考えた。この吐いてしまいそうな気持ち悪さはなんなのかと。結婚はただの紙切れなどと言う人もいるけれど、それでも自分に何かを約束してくれた人とそうでない人との差は大きい。だからわたしは結婚なんてただの紙切れだなんて思わない。出会ったばかりでこの人と結婚したいなどと思うにはちょっと色んなことを経験しすぎてしまったけれど、"絶対結婚の可能性がない"という関係は結びたくない。家に着いたら涙がぽろぽろとでてきてしまった。楽しい旅行をして、楽しい散歩をして、君だけを見てるなんてありえない、君と結婚なんてありえない、そう宣言されたような気分だった。
が、そこで電話が鳴った。彼が空港からかけてきたのだ。
「どうしたの?」
「さっきはごめん。僕余計なことを喋りすぎたね。職業柄こういう議論を交わすことが多くて、ついつい君に話したくなっちゃったんだ。でも、誤解して欲しくないんだ。それが動物学的に不自然だろうとなんだろうと、僕は人間だから人間の風潮に従って結婚もするし、相手を悲しませないように一夫一妻制に徹すると思うよ」
何度も何度も謝られた。よかった、わたしが何に悩んで、何に悲しんでいるか解ろうとしてくれる誠実な人で。
梅雨の季節にまた再会するのかな。
(写真:湯西川温泉にて)