My life as a cat
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2011年12月24日(土) やさしい灯り

クリスマス・イブ。寒さは厳しいけれど、快晴。夕方、先日海外出張から帰ったばかりの元同僚のケイさんと赤坂で落ち合った。パブで一杯やろうかと赤坂サカスの周りをうろついてサーチしたが、結局ケイさんが韓国料理屋の前のチゲ鍋の写真に惹かれ動かなくなってしまったため、そこに落ち着いた。わたしは石焼ビビンパを、ケイさんはもちろんチゲ鍋をハフハフほうばりながら近況を報告しあった。数ヶ月前、離婚や失恋でぼろぼろだった彼女には今は結婚のことまで話す新しいボーイフレンドがいる。

「何もかもが最高って思える人なの。お互いバツイチ同士だから、離婚の辛さを理解しあえる。日本史や時代劇マニアなのも同じだから話があう。それに何よりも心の温かい人なんだ。」

誰かを愛おしく思う熱い情熱が伝わってきて、わたしの胸をも温めてくれる。明けない夜はないというけれど、彼女を見ているとつくづくそう思う。わたしのほうはそんな気絶しそうなハッピーな話題はなかったから、一度だけ会ってわたしにひと目惚れしたといって、(その日、一緒に飲んだ酒は"ひと目ぼれ"という名前だった(笑))また遥か海の彼方の家に戻っていった人の話をした。そこから、話題は恋人を追って海を渡った日本人女性に発展した。わたしの友人、知人でもそういう人は何人かいる。めでたく結婚した人もいるが、敗れて路頭に迷った人もいる。そして後者の共通点はそこで諦めず、現地で仕事を見つけたり、また新しい恋人を見つけたり、挙句はそこで別の人と結婚してしまったりしていることだ。

「なるほどな。転んでもただで起き上がらないということが大切なんやな。」

最後まで真剣に聞いてきたケイさんがしみじみと呟いた。本当、人間なんてどこでも転び得る。国の経済が破綻した人もいれば、津波で家族や家を失った人もいる。転ばないようにそろりそろりと歩いていたって、自分の力では防ぎようもない災難が襲いかかってくる。だから一番大切なのは転ばないことではなく、そこからどう起き上がるかなのだろう。

ほんの小さなクリスマス・プレゼントにと朝に焼いた林檎と胡桃のケーキと紅茶をケイさんにあげると、さすがやな、と男性のような反応を示して喜んでくれた。

「じゃぁ、こちらは何も持ってないから食後のコーヒー奢らせてな。いこかっ。」

外へ出ると、通りにはトナカイのごとく変身させられた犬がすまし顔で歩いていた。心にぽっとやさしい灯りが燈るようなイヴだった。


Michelina |MAIL