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2011年12月13日(火) |
南半球からやってきた風 |
2年前に会社を辞めてオーストラリアにワーホリへ行った男の子がひょっこり会社に遊びにきた。とにかく音楽で食べて行きたいのだと、昼間は派遣社員として働いて、夜はカフェで無償演奏をしていた。一度演奏を聴きに行ったが、なかなかセンスのよいすっと耳に馴染むようなギター演奏だった。しかし、それだけにわたしのような音楽に精通していない素人には他と差別化が図れないというのが難点なのではないかというのが感想だった。一度、結婚という話題で盛り上がっていた時に、誰かがポンッと彼にふったら、
「僕は見ての通り、不安定で貧乏で結婚なんて出来る状態じゃないでしょ。」
と力なくつぶやいていた。そろそろ諦めなければいけないのかなどと言っていたこともあった。
それが!なんと、今はオーストラリアのパブで演奏し、お金を得て、底辺、ド貧乏ながらもなんとかそれで食べているという。すごい、底辺だろうと自分の好きなことをして、それで食べている人に誰が敵おうか。彼の目に、そこそこの安定を手に入れて、日々こつこつとストレスと貯金を貯めこんでいるわたし達とはまったく違う輝きが見えた。この仕事が嫌いなわけではないけれど、かといって心から楽しんでいるわけでもない。人間人生の貴重な時間をどれだけ自分の好きなことに注ぎ込んだかでその価値は大きく変わってくる、とは日々しみじみと思うことだ。
彼が去った後のランチタイム、みんなふとそれぞれ思い思いの溜息をつき、少し立ち止まって、忙しさの中でしばらく遠のいていた自分の夢に思いを馳せたのだった。