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「桜の開花予想なんてしなくたっていいわよ。いつか絶対咲くんだから。」
朝のニュースを見てぼやいている母を尻目に家を出る。祖父母の家のほうの田舎道には敵わないが、うちの近所で咲き始めた梅の花も心踊らされるには充分だ。どこかの民家の庭に道路側の通行者に見せびらかすかのようにクチバシを向けて置かれている実物大のアヒルのフィギュアの横を通過する瞬間に、毎回驚き仰け反るのが日課。わたしの反射神経というものは学習能力がないらしい。
天気がいいのでランチは外へ出た。日光浴をしながら読んでいるのは。。。
久坂葉子作品集「女」
自作の小説を遺書のようにしてたった21歳で人生に見切りをつけてしまった人らしい(わたしが生まれる前のこと)。鋭敏な感受性を表現する端的な言葉はその凝縮された短い生涯のようだ。人生なんて苦しいのが当たり前よ、死にたいなんて若気の至りのよ、あまりにも浅はかで短絡的ね、とみくびりながらも一度ページを開いたら引き込まれ、彼女の苦しみが体に突き刺さってくるようだ。
後からやってきた同僚と「退職金」の話になる。
「あと3年働けばたんまり出るから、それを持って海外遊留学かな。で、ガイジンと結婚ね。あ、待って、やっぱりアライさん(元同僚)みたいなハーフがいいかな。日本人と欧米人のいいとこどりね。で、30才で再就職。20才の時と同じように新しくスタートするの!」
わたしがパースでぼんやりしている間もずっとずっと健気に働いてきて、たまに、見送るばかりで、、と送別会を嘆く彼女が人生初のロングヴァケーションへ経つのを嬉し涙を流して見送ってあげたい気分だった。