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雪。これぞ、エルちゃんの季節。夏はダレきった舌から涎をだらだらたらして情けない姿だが、今日は凛々しく庭を歩き回って、勝ち誇ったような顔つきで片足をあげて小便をしていた。
テレビで世界中の孤児のことがやっていた。親の身勝手で捨てられてしまう子供達というのはもちろん言いようもなく悲しいけれど、一番切なかったのは愛のある親子が離れ離れになるのだった。厳寒のモンゴルで、冬の間仕事も見つからない上に、健康を害している母親が、二人の幼児を施設に預ける以外になくなってしまった。真っ赤な顔をぐちゃぐちゃにして泣いてぐずる妹と、声を無くしたみたいにだまって佇む姉。わたしが子供の頃、母と口論をすると、母は、
「そんなに言うこときかないんだったらお母さん、どこかに行っちゃうからっ!」
と言ったが、そのうちなんだかんだと仲直りしてしまう。しかし、忘れた頃にわたしはその言葉を思い出して、急に母がもう帰ってこないのではないかと不安になって庭で泣き喚いて、ちょっとゴミを出しに行ったとか、買い物に行ったとかでひょっこり帰ってきた母を驚かせた。口から飛び出してしまいそうなほどドクドクと震える心臓の音や周囲の景色が見えなくなってしまうほどの精神の狂乱を覚えている。春が来たら仕事を見つけて迎えにくるからと約束して親子は別れてしまった。とても悲しかった。人間は多くを手に入れれば入れるほど欲張りになるのが常だから、悲しみとか不満とかの感情なしに生きていくのは無理だろう。けれど、おなかいっぱい食べられて、働きたければ受け入れてくれる場所がある、愛する人がいる、平穏な寝床がある人々はそれだけでもっともっと笑って愉快に生きていくべきだ。