My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2007年08月27日(月) 小さな優しさ

夕方に自転車でコンビニまで写真を取りに行った帰り道、轟音とフラッシュのすさまじい雷を伴う夕立に襲われた。見渡す限り田園風景で雨宿りする場所もない。なんとか大きな木を見つけて木陰に滑り込むと、ぴたりと同時に反対側からもわたしと同じように小学校高学年くらいの男の子が滑り込んできた。大きな木もあまり役に立たないほどの豪雨で、もう髪の毛先から水が滴り始めていた。せっかくプリントした写真が塗れてしまうとそればかりに気を取られていると、どうも男の子が落ち着かずこちらをちらちらと見ているのに気付いた。こちらも横目でちらちらとさりげなく確認してみたが、やっぱりわたしを気にしている。男の子がいる2mくらい離れた木陰は特等で彼はわたしのようには濡れていない。視界に入る範囲で二人きりなのに顔を背けているのもあまりにも無愛想かと思い、小さく意を決してまっすぐ顔を見てニカリと笑いかけてみると、目を合わせずてれたようにぺこりとお辞儀をする。それでもやっぱり落ち着かないようすでこちらを見ていたが、そのうち鞄を肩にかけて、全く雨脚は弱まっていない中へ飛び出して全速力で自転車をこいで行ってしまった。小学生のくせに時間に追われているのだろうか、どうせあと5分も待てば雨脚が弱まるだろうに待てないのか、と思いながら男の子がいたところへさっさと移動して気付いた。彼はわたしにこの濡れない場所を譲ってくれようとしたのではないか。それでも、どうぞと声をかけるのが恥ずかしいから黙って雨の中飛び出して行ったのではないだろうか。そんなことをたらたらと考えはじめたら、近くの電線に雷が落ちたのかショートするのを目撃して悲鳴をあげた。

なんとか家に着くと緑色のリブニットが色落ちして白い麻の帽子にシミを作ってしまい、母はこんな色落ちするやつ日本ではもう売ってない、オーストラリアは遅れてるのね、と言ってゴミ箱に投げ入れた。

この国では電車で我先にと席を取り、我先にと外へ出ようとするような大の男が目立つ。知人と他人をきっぱり区別つけて他人へ親切にしないことは当たり前だと思っている。ギュウギュウに混んだ30分に一本しかないバスに最後のひとりが駆け込んできて「すみません、、もう少しつめられますか?」と乗り込み口で叫ぶと、近くにいた花輪君のような若い男が「無理ですっつっても乗ってくるんだろう」と迷惑そうに吐きすてるのを見て、あの男の子を思い出して、あれは絶対わたしに譲ってくれたんだとどうしてもそう思いたかった。


Michelina |MAIL