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2007年08月13日(月) |
美味しい果物のはなし |
パースでのある夏の日、オージーのシェアメイトがココナッツを買ってきて、中のジュースを飲むのに、鈍いオージー・ナイフで懸命にギコギコ、ギコギコと穴を開けようとしていた。穴が開いたら少し分けてもらおう、と勝手に決めて隣で見ていたのだが、いつになったら飲めるのかと気が遠くなってきた頃、上半身裸、テロテロなパンツ一枚履いて、野良犬のようにだれて転がっていたマーヴが見るに見かねて起きだした。
「そんなんじゃ、いつまでたっても飲めないよ。かしてごらん。」
と言ってキッチンで比較的シャープで刃の長いナイフを選んで外に出た。おぉ、何が起こるんだと着いていくと、マーヴは外のテーブルにココナッツを置いて、上からぎゅっと押さえつけてワン、ツー、スリー!でもう片方の手に持っていたナイフを思いっきり横に振って、スパンッ!と一瞬にして二つに割ってしまった。友達は、韓国人のBFが兵役で鍛え上げられた逞しい腕で、石焼きビビンパをもりもりかき混ぜる姿にメロメロになったのだ、と話していたが、その気持ちがすごくよく解った。ジュースを飲んだらスプーンで実をくり抜くようにして食べる。プリプリとした蒟蒻ジェリーのような固めの食感がたまらない。
数日後"Iron chef"(料理の達人のアメリカ人バージョン)でココナッツ対決だった時、白人アメリカ人シェフ達がココナッツをギコギコとやって苦闘しているのを見て、もう一度自分のBFの"暮らし"における逞しさを自慢げに思った(そう本人に言ったら「っていうか、こいつらホントにシェフなのか」と呆れていたが)。
マンゴーやアヴォカド、ネクタリンなどの果物を買うときも、いつもマーヴがボンボンと積み上げられた果物の山から何個か手にとって、実がしっかりしていて程よく熟れているものを選んでくれた。実家のバックヤードには腐るほど生っているそうだ。果物は外見によらず中身がいいこともあるんだと言っていた。
こんな暑い日は美味しい果物に齧りつきたい、と思ってスーパーへ行くとエアコンをガンガンきかせた店内にクッションに乗ってキレイにパック詰めされた果物が品よく並んでいる。それはパースのように店員が捥がれてそのまま来たような裸の果物が入ったダンボールを逆さにして品出しするような新鮮さが奪われているような気がして少しがっかりする。
実家の周辺のイチジク畑ではいよいよ収穫が始まって、犬の散歩で通りかかったらくれた、と母が数個持ち帰ってくる。家族全員これが大好きで奪い合うようにしてペロリとひとくちで呑み込んでしまう。