プラチナブルー ///目次前話続話

作戦Bとデニス
April,24 2045

11:55 ローゼンバーグ総合大学 東広場

東広場のベンチの上で、束の間の休息を取っていたブラッドの頭上では、降り注ぐ光を遮るように覆っていた木々が大きく揺らめいている。
ヘリコプターの降下の影響で、吹き降ろしの風が一層強くなっていた。

「うるさくて、眠れねえよ・・・」

ブラッドが文句を口にして上半身を起こすと、ほぼ同時にプロペラの旋回音が小さくなり、やがて消えた。
ダウンウォッシュによる風が止み、緑一面の天井が静けさを取り戻すと、鳥のさえずりが、どこからともなく辺り一面に少しずつ広がっていく。

ブラッドは左腕の青い光を放っている携帯端末機に気づくと蓋を開けた。

「昼食のお誘いかな・・・今日は珍しく腹が減ってないんだよな・・・というか眠い・・・」

呑気な気分を吹き飛ばすような真顔のトッティが現れ、その下にメッセージがスクロールを始めた。

「アンジェラの看護?具合が相当悪いのかな・・・オレ、整形が専門なんですけど・・・」

独り言を携え、渡り廊下から東塔のエレベーターホールに入ると、上階へのスイッチを押す。
無意識に視線を上げた先には、5階で停止しているランプが点灯している。
ポケットに手を突っ込み、じっと待っては居るものの、エレベーターの籠は一向に降りてくる気配もない。
待っている数秒の間に、ブラッドに睡魔が容赦なく襲い掛かり欠伸を誘発した。

「早くしろ〜」

咄嗟に口走り、ドアに蹴りを入れた。
その瞬間、ブザーが鳴り、停止中の赤いランプが点滅を始めた。

『振動を感知しました・・・停止します。復旧の為の緊急連絡先は・・・』

「げ、やっちまった・・・誰か乗っていたら、ごめんなさい」

ブラッドは、エレベーターのドアの上から流れる録音されたアナウンスに向かって謝ると、左手にある階段を勢いよく掛け昇リ始めた。


11:55 東塔 5階

東塔の構造は、1階は180名と240名が収容できる大講義室、2階は50名程度収容の一般講義室が南北に8部屋、
3階、4階に助教授の研究室、5階が教授室と、それぞれのフロアーが分かれている。
屋上へは、最上階の5階でエレベーターを降り、非常階段で昇る構造だ。
屋上に繋がる非常階段は、中央付近と北側外壁とにあり、ヘリポートは建物南側に設置されていた。

ヴァレンに声をかけた男を、『デニス』と、周りの男達が呼んだ。
黒服にサングラス、髪は茶色で長髪、エレベーターに乗るようにと言葉を発っしてからは無言のままだ。
他の3人の男達も同様に黒服とサングラスをかけているが、髪の色は東洋系の黒髪だった。

東塔5階でエレベーターのドアが開くと、デニスは先頭に立ち一歩踏み出した。
男が左右を見渡してから振り返り、中から出てくるよう手招きをした。
全員がフロアーに出ると、デニスは、一人に屋上へ行くよう指示を出す。
続いて、他の2人にも、エレベーター前と非常階段前で、待機の指示を出した。

3人の男達が指定された配置へ移動すると、デニスは南側にある喫茶フロアーに歩を進めた。
オープンキッチンになっているその一角に座るように、デニスが無言のまま椅子を引き目配せをした。
ヴァレンは、その木目調の椅子に腰を下ろすとテーブルに両手を置いた。

ヴァレンの向側に男が座ると、両肘をつき、身を前に乗り出して口を開いた。

「ファンデンブルグ助教授。黙って聴いてくれ」

ヴァレンは頷く代わりに男に顔を向けた。

「オレの名は、デニス・T・ヴォルフガング・・・率直に言おう。アンタと取引がしたい」

ヴァレンは、無表情のままサングラスに反射している自分の姿を睨みつけた。
デニスは、取引の内容を一方的に話し始めた。

一通りの条件を男が話し終えると、ヴァレンは無言のまま小さく頷いた。

「OK!取引成立だ」

そう云って、デニスが立ち上がると、20m.程離れているエレベーター前に居る男の場所へ移動した。

「これからは算段通り、12:00に作戦Bに移る。」
「はい」
「ヘリが飛び立つまでは油断できない。失敗は許されないから、お前とアイツはここで待機だ」
「はい」
「ヘリが飛び立ったら作戦は成功だ。教授への連絡はオレが入れる。任務はそこで終了だ。以上!」
「了解!」

デニスは、階段の前で見張りをしている男にも同様の指示を出すと、ヴァレンを呼んだ。
ヴァレンがデニスの近くまで来ると、二人は階上へ向かって歩き始めた。

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