プラチナブルー ///目次前話続話

ブルーヴァイオリン
April,9 2045

12:10 食堂 

「あ〜腹減った〜、さあ、食おう」
「あはは、ブラッドったら、いつもお腹を空かせてるわね」
「そりゃ〜育ち盛りだからな」

バイキング方式の学食で、ブラッドはテーブルに次々と大盛りになった皿を並べる。
その姿をアンジェラとヴァレンは呆れながらも微笑ましく見つめている。
3人がテーブルにつくと、ヴァレンがグラスに白ワインを注いだ。

「あれ?一風変わったボトルですね」
「だよね、でも風味はかつてのラインヘッセン辺りのリースリングだ」
「そうなのよね、50年ほど前までは、プロイセンが葡萄栽培の最北限だったけど、
今じゃ、地球が温暖化して、スカンジナビアの南端辺りまで畑が広がってるわ」
「アイスワイン用の葡萄も凍らなくて困っているって聞いたことがあるもの」

ワイン談義をしているアンジェラとヴァレンの目の前で、ブラッドはボトルを見つめていた。

「なんだか、グラマラスな女体みたいだ・・・ぼん・きゅ・ぼ〜ん」
「もう、本当ブラッドって、すぐそんな風に考えるのね」
「あはは、でもアンジェラ、アタシも初めて見た時には女体のイメージかと思ったのよ」

「いいな〜この青いボトル、ヴァレンティーネ様を見てるようだ」
「あら、ブラッド、嬉しいことをいってくれるわね」

どう見てもスレンダーなスタイルのヴァレンを見て、アンジェラが苦笑いしている。
プロイセンの偉大な音楽家達を称えて、ヴァイオリンをイメージして作られたボトルだとヴァレンが説明した。

「ブラウエ・ビオリーネ(blaue violine)っていう名前で呼ばれているらしいわ」
「ああ、なるほど、そう言われてみれば、ヴァイオリンの形にも見えなくはない・・・がっかりだ」
「あはは、青いヴァイオリンね、本当見たまんまね」


「さて、午前中の出来はどうだった?」

ヴァレンが口につけたグラスをテーブルに置きながら尋ねた。

「それが、ヴァレンティーネ様、聞いてくださいよ、いきなり一戦目でアンジェラとの対戦で・・・」
「あはは、ラッキーな8,000オールのスタートだったから」
「酷いよな〜、ダブリー・一発・チートイ・ドラ4だっけ」
「うふふ」

悔しそうなブラッドの言葉へアンジェラが得意気に笑った。

「でも、何とか振込みゼロで今のところ5戦クリアしてます」
「そう、やれば出来るじゃないブラッド、立派ね」
「えへへ、ヴァレンティーネ様にお褒め頂けるなら、ますます頑張りますよ」

「私も、最初のラッキーゲームのお陰で、5戦までは順調です」
「OK,それなら、午後からアタシは外出するから、2人とも5時まで打ち続けておいてね」
「はい」

パスタをフォークで巻く手を止め、アンジェラがヴァレンに尋ねた。

「あ、そうだ、部屋にあったブルーの小瓶、あれは何?」
「ブルーの小瓶? ああトッティが、アンジェラにって貰った奴か・・・」
「そういえば、トッティが今度説明するって言ってたわ、夕食の時にでも尋ねてみましょう」
「はい」


午前中の疑問点を幾つか尋ねたブラッドとアンジェラに、ヴァレンは丁寧に疑問に答えた。
昼間の学食は、この時期、新入生達でごった返すのが風物詩でもあるかのように、学生達で賑わっている。

早めに食事を切り上げたヴァレンは、5時にトッティの店に行くと言い残して席を立った。
ヴァレンのヒールの足音は、雑踏の中で昨日よりも早く音が聞こえなくなった。

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