プラチナブルー ///目次前話続話

LESSON,3
April,9 2045

9:00 ファンデンブルグ研究室 

白衣を靡かせたヴァレンが部屋に入ってきた。
ヴァレンが東側の窓を開けると、春の涼しい風が部屋の中に吹き込んでくる。

「昨夜は2人ともよく頑張ったわね」
「はい」
「ええ、なんとか…」

「朝、データを見たけど、楽しませてもらったわ。アンジェラ、コーヒーを入れてくれる?」
「はい」

ヴァレンは2人分のレポートをテーブルの上に置き席に着いた。
吹き込んでくる窓からの風に白銀の髪が揺らめき、時折青白く輝く光が耳元から零れる。

「どう?ブラッド。10試合を打ってみた感想は…」
「はい、自分の手と課題のことで頭が一杯で、結構他の人に『あっ』って感じでよく当たりました」
「そうね、でもしばらくは、基本的なゲームの構成とあがる楽しさを感じてくれればいいわ」
「はい、楽しかったです」

「どうぞ」

アンジェラは3人分のコーヒーをそれぞれの前に置くとブラッドの横に座った。

「ありがとう。アンジェラ… アンジェラの感想は?」
「はい、ひとつの役だけじゃなくて複合的に役がついたり、逆に役満の時は、
ドラや他の役が加味されなかったり、本に書いてた以外のことも実際打ってみると沢山ありました」
「そうね、先日の本はあくまでも入門書であって戦術書ってほどのものでもないから」
「ええ」

「とにかく、目一杯打てるだけ打って、まずは理屈よりも、感覚で切る牌を選べるようになりましょう」
「はい」

ヴァレンが昨夜の10試合分のデータから抽出した2人の今後の課題と対策や、
実際の打った情報がすべて数字化され標準値との対比したスコアとして分かりやすくまとめられていた。

「アンジェラは効率的に牌を切って打ててたわ」
「はい」
「あまりにもスピードを重視すると破壊力が生まれないから、次は役を絡ませることも試してみて」
「はい」

アンジェラはレポートを捲りながら、リーチをして上がれなかった時の相手の牌勢や、
他家の動きによって、手に入れた牌や逃した牌を確認し、時折頷いていた。

「ブラッドは、そうね、結構ロスの多い打ち方だけど、結果的に上がれる選択が出来ていたわ」
「あはは」
「ただ、自分が勝負手にならない時は、他人の動きも注意することを覚えて」
「はい、わかりました」

ブラッドは手渡されたレポートを小声で読み上げ、ところどころでヴァレンに質問を投げかける。
ヴァレンはその説明を数値を使って解説し、いくつかの取るべき選択を提示した。

アンジェラとブラッドがレポートを完読し、一通りの質問が終わった。


「さあ、次の10試合の課題をだすわね」


LESSON3

「アンジェラはリーチ時の平均得点5,000点と、1ゲームの収支平均29,000点を目指してね」
「はい」

「ブラッドは10試合での5,200点以上の振込み回数を上限5回と、12順目以降のリーチの禁止ね」
「ええ?リーチの禁止? 役がない時はどうするんですか?」
「役なしドラなしでその順目以降に相手と喧嘩しないこと、降りる練習をしてみて」
「わかりました。先行逃げ切りみたいなもんですね」
「そう、特に親のリーチへの振込みはご法度よ」
「はい」

「さあ、部屋に戻って始めてね…12時になったらお昼にしましょう」
「はい」

2人は、それぞれの部屋に戻り、自分達のデスクの前に座った。

アンジェラはオンラインゲームの電源を入れ、ログインすると早速ゲームが始まった。
デスクの横に置いたままの小瓶が青白く輝いている。

「あ、ヴァレンにこれは何かを聞くのを忘れてたわ・・・ランチの時にでも尋ねてみよう・・・」


『うわっ、対面の親、いきなり、ダブリーかよ』

隣の部屋のブラッドの声にアンジェラはくすっと笑った。

「ごめんね、ブラッド。チートイの西待ちよ」

小声でそう呟くと、ブラッドから西が出ないことを祈り、壁に向かってウィンクをした。

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