酒場と野球と男と女
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2006年02月22日(水) 長野の料理屋「八風」を知っているひとは、信州通ということにしますの巻

     昨日は、恩あるH社長のお見舞いで、高崎の病院へ。

 元後輩のHの運転する車で関越ドライブ。

 車中、また昔話からバカっ話、仕事の話と、ホント途切れることのない

 オシャベリなオヤジ2人。

 で、まぁ上毛線I野駅近くの病院ですわ。

 十二指腸がんの病名で、今月から再入院したH社長。

 思ってた以上に元気よく、顔にも艶があり、2人でほっ。

 ただ現在、食事は全く摂れず、点滴のみの栄養補給

 Hとともに長らくの無沙汰を詫び、加減を気にしながら、世間話に興じた。

 H社長の保有する軽井沢の別荘の話になり、生まれが善光寺で長野の地理に

 詳しいH、こんなことを切り出した。


 「社長、確か別荘の近くに、ハップウという割烹だか料理屋があるの

  ご存知ないすか?八の風と書いて、[八風]ですけど」

 「いや知らないねぇ」

 「そうすか、そこ、なかなかのもの食べさせてくれるんですよ。

  特に魚、刺身、お造り、すっごい美味いんですよ

 手の甲で、涎を拭かんばかりにひと声高く喋るH。

   (おいおい、相手の社長は、今何も食べれんのだぜ。つうか、ここの
  
    病室にいる人も同様だし、皆点滴打ってるべ、ヤバくねぇ?)

 との、オイラの心中なんぞ、全く関せず、いかに[八風]の料理が美味いか

 舌もとろけんばかりかを、身振り手振りで説明するH。

 「ほう、そんなに美味しいところが近くにあったとはねぇ」

 とにこやかに応ずるH社長が、いつ顔色を曇らせないか、

 いや、社長はまだしも、同室の誰かが、

 「いいかげんにしろ!こっちは、満足に何も食べれんのじゃぁ!」

 と、怒鳴らないか、ヒヤヒヤっとしながら、話の終わりを急がすオイラ。

 「ぜひ、お元気になったら、ゴルフがてら行きましょうよ、ぜひ」

 ようやく締めくくったHに、何やら満足げな笑みが。

 では、お大事に、また、来ます、いやいや遠いところをね、ありがとう。

 と病室を出、帰りの車に乗り込んだ。

 「いやぁ、お前、何も食べれん人に、あそこまでは残酷過ぎなかったかえ?」

 と、切り出すオイラに、生来のオトボケ顔で応えるH。

「そうすかぁ?わざとですよ、わざと」

 「わざと?わざわざ、長々と、食べもんのことを?」

 「そうすよ。医学分野ん中で、色彩心理とかいうのがあって、例えば、

  鬱病患者が真っ赤な下着をつけたら、病状が良化したとか、病室の壁を明るい

  パステルカラーにしたら、病の進行が留まったとか、そんなのがあるんすよ。

  それと同じようなんで、食べたい絶対食べたいという、欲求心理が、病気に

  打ち克つ抗原体を増やすんですよ」

 「ヤマイはキから、つうことか」

 「まぁそうす、欲望とか欲求がないと、特に病人は、イカンのです

 妙にいつになく、強い口調のHの顔がふっと翳ったような気がした。

   (前に、なんか、あったのかいなぁ)

 と、一瞬思ったが、そこはオイラ。

 「ふん、まぁ、お前の意図は十分判っていたんだけどな

  ただまぁ、社長はそんなことは無いだろうけど、人によっちゃぁ、

  逆効果つうか、よからんこともあるんじゃねか、つうことを言いたかった

  わけよ。まぁ、わざと、言ってるなとは、思ったけどな」

 「−−−(ニヤッと)まぁ、そういうことにしときましょう、気をつけますよ」

 それから話題は、昔付き合った女の子の品評になった。

 昔、札幌のイベントで、隣接したフィリップモーリスのブースのキャンギャル、

 「毎日、とっかえひっかえで、出張費40万、キレイに1週間でパーですわ」

 「ほんまかいな、そんな毎日毎日、キャンギャルがか?」

 「大江千里のファンだったんですよ、そのコたち。ボク、似てるっしょ?」

 「漫才の?」

 「それは、千里万里って、古ッ!」
 

 ーーーーー車中にいつもの空気が戻ったが、どこか2人の想いが重なり、

      ふわっとした暖かさを感じさせるものだったーーーーーと。






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