fleur bleue
sora



 診察室

診察室の白い扉を開けると、
そこには、一人の若い医師がいた。
毅然としていて、素敵な人だったと思う。
とても、優しい表情をしていた。

私は、椅子に座り、いくつかの質問を受けた。
できるかぎりの理性をもって、今の状況を的確に伝えた。
思ったよりもちゃんと話せる。
ただ、一度も目を合わせることはなかった。
そんな余裕なんてなかった。

初めて会った見知らぬ人に、心開けるはずもなく、
お互いに確かな手応えを掴むことができないまま、
初めての診察を終えた。

どこかで聞いたことのある名の薬を受け取り、
私は病院を後にした。

空は、不自然なほどに青く、
まるで私を嘲笑うかのように、どこまでも晴れていた。
一点の曇りもなく、晴れていた。

早く、家に帰りたかった。
灯りのない、真っ暗な部屋に、帰りたかった。

2006年03月16日(木)
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