fleur bleue
sora



 待合室

緑があふれる静かな街。
幸せそうな人たちが、穏やかな笑顔で過ごす街。

その街の一角に、病院がある。

一目では決してわからない。
明るい街並の奥の奥に、ひっそりと佇んでいる。

一歩足を踏み入れると、そこはもう、別世界。

憂いあふれる人たちが、救いを求めて集う場所。

そこでは、どこかで感じた懐かしさに襲われる。
そう、いつも感じている憂欝、不安、孤独。
そこには、そういった類の重い空気が流れて、
どこにも吹き抜けずに、淀んでいる。

待合室には、心を失った人たちが、
所狭しとひしめき合っている。

お互いは皆無関心で、会話を交わすことはない。
うつむきながら、遠くをみつめながら、
ひたすらに無言で、自分の番が来るのを、待ち続ける。
救いを求めて、待ち続ける。

ドアの向こうに、救いがあると信じて、待ち続ける。

2006年03月15日(水)
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