俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
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「川、いつか海へ〜6つの愛の物語」NHK その1 水源で生まれた、始まりの一滴 - 2005年10月19日(水)

「川、いつか海へ〜6つの愛の物語」NHK 2003年12月 オムニバスドラマ

その1 始まりの一滴のようにかすかな思い

「一本の川は、人間の一生に喩えられる。・・・」森本レオの静かなナレーションに、思わず瞑想したくなる。
そう、確かに川は、一滴の水として山奥深くに生まれ、豊かな森に育まれ、険しい岩間やのどかな野山を、時には激しく時にはやさしく潤しながら、糸のように細かった流れもいつしか流れ流れて大河となって。最後には、全ての命の母なる海とひとつになり、そしてまたいつか大気を漂って、しずくとなって降りて来て、新たな川の命を始める循環。気が遠くなりそうな大自然の営み。森と海は川を通してしっかりつながれている・・・ああホントに気が遠くなってきた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。
人間もまた、数十年かけて、いや何世代もかけて、こんな川のめぐりにも似た人生を生きていくのだった。
一滴の無垢な清水も、長い人生の間には、裏切ったり偽ったりと色んな濁りを抱え込むけれど、最後はそんな弱さも何もかも受け容れる大きな愛に一体化してくんだなあー。そういうのいいなあ。

森の男・司郎(森本レオ)は海の女・遼子(浅丘ルリ子)と出会った。一緒に海で生きていく決心をした。二人で作った青いガラスの浮き球の中には、そんな両親の愛が詰まってる。
しかし嵐の海で無くなった父、彼を死なせてしまった罪悪感に苛まれる母。そんな両親の姿は、いつしか娘・多実(深津絵里)にも影を落とし、多実は人を深く愛することをどこかで恐れるようになっていた。
第1話。
多実の夫だった慎平(ユースケ・サンタマリア)との、「離婚旅行」の目的地は、山の奥の水源地。密かに持ってきた荷物の中には、青い浮き球。
大切な浮き球を、父の故郷である森に還したいと、ずっと思っていた多実。本当は、好きな人と来るはずだった。


浮き球には、人の心の扉を開く何かの不思議な力が宿っているらしい。人を素直にさせる何か。
ここで多実は慎平に、心に大切に秘めていた浮き球のこと、両親の秘密を話す。そして、彼の前で初めて、「涙」を見せる。
浮気をしたのは夫のほう。でも実は彼女が彼を本当は愛していなかった、愛する努力をしなかった、愛を恐れていた。心をさらけ出していなかった。そのことに気づいた多実。
彼女の心の奥を初めて垣間見た彼は、彼女と一緒に浮き球を水源の泉に浮かべたいと思った。そのとき彼の心の奥にも何かの思いが一滴、生まれたに違いない。

いかにも薄っぺらな感じだった慎平の表情が、ふと、瞬間に見せた、多実に対する、今までになかったような、ある思い。これから離婚しようというときに、妻の心に触れて・・・。
多実がヤケになって捨てた浮き球を、こんどは慎平が、懸命に拾い、多実に手渡す。慎平の顔からすーっと余計なものが脱げて素になって、自分でも気づかないような本当の心が一瞬現れる。そんなときのユースケ氏の真顔がいい。

「今は、あなたが好き。好きだけど、別れるの。ごめんね、すぐ泣き止むから。」と、強いて笑顔を作って、涙を流す多実。深津絵里ちゃんは、こういう強がりな女の子の表情が素敵だ。
そんな彼女をみて慎平が思わず何か言いかける。ここで彼には、離婚を思いとどまって愛人と別れるということも出来たはずだけれど、それがそうできないところが、彼の弱いところ。

結局、慎平の望んでいた離婚は成立し、スリーサイズ抜群で金持ちの愛人と婚約はしたけれど、その彼の心に生まれた、愛の最初の一滴は、一年という時間をかけて、多実っていう海を目指して流れていたのでは。
浮き球がいつしか川の流れるままに海を目指しながら、その行く先々で多くの人の心の愛を呼び起こし、様々なドラマを生み出して行く間、
慎平もまた、人間のずるやさ弱さや浅はかさを抱えながら、必死に流れてゆくのだった。



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