月に舞う桜

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2014年10月12日(日) 【10/12】XJAPAN MSGライブビューイング

現地時間10月11日(日本時間10月12日の朝9時)、XJAPAN念願のNY・Madison Square Garden(以下MSG)公演が幕を開けた。
NYから遠く離れた日本の地で、私はこの記念すべきライブをライブビューイングで観た。ライブから1ヶ月以上経ってこれを書いているので、忘れているところも多いけれど、覚えている限りのことをなるべく書き残しておきたい。

私は正直、MSGというのがどんなところなのか、よく知らない。「ロックの聖地」とか、「多くのロックミュージシャンがこの場所でライブすることを目指している」とか、いろいろ聞くけれど、あまりピンと来ていなかった。
ただ一つ分かっていたことは、XJAPANのメンバーが長年夢見てきたライブが、いま、やっと実現するということだった。それがどんな小さな場所であれ大きな場所であれ、彼らの夢が叶うのだという事実だけで、私にとっては心震える感動的な出来事だ。

セットリストは、横浜アリーナ公演と同じだった。
Miracleが流れる中、まさに奇跡だと思った。
一筋縄じゃいかない多くのトラブルや悲しみがあって、それでも前に突き進んで、彼らは今、MSGのステージに立とうとしている。
ライブビューイングではあるけれど、私はその奇跡の瞬間に立ち会えるのだ。NYで行われるライブを日本の映画館でリアルタイムで観ることができる。何ていい時代を生きているのだろう。私は、この時代に生まれたことに感謝した。

やっと夢が叶うんだね。おめでとう。
ここまで辿り着いて、本当に良かった。
私は、早くも目を潤ませていた。

光を浴びて、ドラムセットのうしろにYOSHIKIが姿を現した。
その表情は、心なしか横浜アリーナのときよりも緊張しているように見えた。
いくらYOSHIKIとは言え、これだけの大舞台、緊張するのも無理はない。それとも、そう見えたのは、親のような気持になっていた私自身がちょっぴり緊張していたからなのかな。

ステージから客席に向かって、一本の花道が伸びていた。
JADEが始まると、その花道の両脇に炎が上がった。演出も、気合が入っている。
5人の表情やパフォーマンスには、横浜アリーナのときよりもさらに気迫がこもっていた。初めからエンジン全開という感じだ。
Toshlは、頬に入れているシャドウがいつもより少し濃い気がした。
HEATHの髪型は、左側がいつも以上に盛られて(跳ねて?)いて、右側に絡めたエクステは赤かった。その赤いエクステは、「HIDEと一緒にステージに立っている」というHEATHの気持ちの表れのように思えた。

客席の最前列にはYOSHIKIコスさんとToshlコスさんがいた。少し後方には、HIDEコスの人も。それから、Toshlの似顔絵と「HAPPY BIRTHDAY」という言葉を書いたお手製っぽい丸いうちわを振っている人たちが数名いた。現地時間で言うと前日、日本時間で言うと2日前の10月10日は、Toshlの49歳の誕生日だった。

Rusty Nailでは、横浜アリーナのときみたいに、サビでToshlがマイクを客席に向ける。日本語の歌詞だけど、外国の人たちも大勢歌ってくれていたのが嬉しい。
Silent Jealousyの出だしのアカペラは、やはり今回も圧巻だった。私は目を閉じて、その歌声を全身で浴びた。映画館の高品質な音響設備で聴く、大音量のSilent Jealousyのアカペラ。天から降り注ぐ贈り物だ。

Toshlが「We'll play our new song」と紹介して、Beneath The Skinを演奏。この曲は洋楽っぽいから、NYの会場に合っていると思う。MCがすべて英語なので、聴いているうちにボーっとしてしまうことも多かったけど、Beneath The Skinの曲紹介のとき、新しいアルバムにも収録予定……みたいなことを言っていた気がする。アルバムって、いつ出るのかなあ。10年後かなあ。

PATAとHEATHのソロ対決(いや、対決じゃないって!)、DRAIN、SUGIZOバイオリンソロから紅を経て、HEROへ。
一回だけ、サビ練習を行う。私は、横浜アリーナから数えて3日目にして、ようやくHEROのサビを歌えるようになった。
HEROのフルコーラスを初めて聴いたのは、6月のYOSHIKIのクラシックコンサートだった。そのときは、しっとりしたバラードで、ケイティという女性のボーカリストが歌った。横浜アリーナの1日目は、ケイティが歌うのとは全く違うXバージョンの曲調を堪能しつつも、ライブ後に脳内再生されるHEROのボーカルは、まだToshlじゃなくてケイティだった。横浜アリーナ2日目で、Toshlが歌うHEROが馴染んできた。そして、MSGでやっとサビを歌えるように。何だか、自分の中でのHEROのプチ歴史を感じる。

Born To Be Freeで本編は終了。
アンコールその1は、YOSHIKIのピアノソロから。
YOSHIKIはピアノの鍵盤に付いている何か(汗?)が気になったようで、スタッフにタオルを要求して、自分で拭いていた。「スタッフ、事前に確認して拭いておこうよ!」と思ったけど、タオルで一生懸命拭いているYOSHIKIが何かかわいくて、貴重な姿が見られたのは嬉しい。
ピアノソロでは、白鳥の湖と即興に加えて、何かのハリウッド映画のテーマ曲(たぶんゴッドファーザーだと思う)を弾いた。

ドラムソロが始まるとき、後方の大型スクリーンには大きな天使の翼が映し出された。ドラムの椅子にYOSHIKIが立つと、ちょうど体が翼の間に位置して、YOSHIKIが翼を広げた天使に見える演出だった。
ドラムを叩き始めてしばらくすると、ドラムセットが台ごと上がっていった。そして、花道の先端まで移動していく。東京ドームではおなじみだけど、久しぶりに見る大掛かりな光景だ。

ドラムソロの次はForever Loveで、Toshlが歌う中、YOSHIKIが息を整えながらドラムからステージのピアノまで歩いて行く。
それから、I.V.の前にYOSHIKIが「We are!」を繰り返して、散々煽ってからマイクを渡したいのにToshlの姿が見えなくて、「Where is Toshl?」と困った顔できょろきょろしていたのは迷子の子供みたいでかわいかった。
I.V.を始めるためにYOSHIKIがドラムセットの階段を上がろうとするのだけど、コルセットを忘れていて、スタッフがコルセットを持って慌てて追いかける。そんな様子もライブビューイングだとしっかり見えていて、「スタッフの方々、本当にご苦労様です」と感謝の念が湧く。

Xのときは、花道の上に赤や白の大量の紙吹雪が舞った。もう本当に、降り積もるくらいに大量の。Xの途中、YOSHIKIが花道の上に寝転がると、体に紙吹雪がくっついていた。

花道に積もった紙吹雪は、メンバーがいったん引き揚げてアンコールその2を待つ間にスタッフが掃いて片づけていた。
アンコールその2の最初で、YOSHIKIはアメリカ合衆国の国歌を弾いた。譜面台に楽譜を置いて、それをじっと見ながら、まるで子供の発表会みたいに一生懸命弾いていた。YOSHIKIならアメリカ国歌くらい簡単に弾けそうなものだけど、弾き慣れない曲はやっぱり大変なのだろうか。何にせよ、楽譜をしっかり見て弾く姿からは、NYというよそ様の土地で、その地の人たちの国歌に敬意を表して大切に扱おうとする姿勢が見て取れた。

ピアノを弾いた後、YOSHIKIが「昨日はToshlの誕生日だったんだよ」と英語で言った。
(MSG公演は現地時間10月11日、前日の10月10日はToshlの49歳の誕生日だった)
SUGIZOのバイオリンの伴奏に合わせて、皆でハッピーバースデイを歌った。照れたように、小さくお辞儀をするToshlくん。

ART OF LIFEのピアノソロの場面では、何とピアノが台ごと上がっていった。これには度肝を抜かれた。YOSHIKIもさすがにちょっと心配だったのか、ときどき後ろを振り返って高さを確認するようなそぶりを見せていた。

5人の圧巻のART OF LIFEでライブが終了し、YOSHIKIが花道を全速力で走って行って、客席にダイブした。
いかつい顔のガードマンのおじさんが、慌てて駆け寄る。お客さんの中でもみくちゃになっているYOSHIKIを早く花道へ引き上げなくちゃならないし、かと言って、無理にYOSHIKIの体を引っ張るわけにもいかないし……という感じで、困った様子。すみません、YOSHIKIがお世話かけます。

ライブ終了後、他のメンバーがステージや花道を歩き回って客席に手を振ったりしているときでも、いつもならステージ上の階段に座って静かに見守っていることが多いPATA。でも、この日は自ら花道に出て行って、落ちている紅い薔薇を客席に投げたりしていた。その姿が、とても印象的だった。

横浜アリーナでもやっていたけど、YOSHIKIがToshlをおんぶして、ぐるぐる回って、Toshlが落ちそうになって、二人で笑う。
5人で手を繋いで万歳して、PATAとHEATHとSUGIZOが退場した後も、ToshlとYOSHIKIはステージに残って、2人並んで深々とお辞儀をしていた。

私が行った映画館は、ショッピングモールの中にある。
この日は日曜日で、建物の外に出ると、家族連れやカップルや友達グループがたくさん行き交っていた。ついさっきまでXJAPANのMSG公演のライブビューイングが行われていたなんて、たぶん知る筈もない人たち。
私は、Xのロゴ入りリストバンドを付けた左手を高々と掲げて叫びたかった。

私はね、XJAPANっていう、どうしようもなくバカでエネルギッシュで途方もなく危なかしくて厄介で唯一無二の魅力的なバンドのファンを、20年もやってるの。飽きもせず、バカみたいに、いつもやきもきさせられて、自ら進んで奴らに人生狂わされて支えられて救われて、そうやって生きてきたの。それが、私の誇りなんだ!
そして、たった今、NYのMSGっていう「ロックの聖地」なんて言われている場所で行われた彼らのライブを、スクリーンで観てきたの。
私は、XJAPANという存在を、心から誇りに思ってるよ!

本当はそんなふうに叫びたくて、でも口には出せないから、空を仰いで心の中で思いっ切り叫んだ。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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