月に舞う桜

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2014年10月01日(水) 【9/30】XJAPAN 横浜アリーナライブ1日目(2)

Born To Be Freeが終わると全員退場し、いったん暗転。
客席でウエーブや「We are X!!」をやっていると、しばらくしてYOSHIKIが登場した。客席に赤いバラを投げ、ピアノへ。
今回のピアノソロは、即興→白鳥の湖→unfinished という流れだった。unfinishedは歌も聴きたいなあ。Xのバラード曲では1,2を争うくらい好き。
続いて、ドラムソロ。東京ドームのときみたいに、台ごと上がったりはせず。
ドラムソロは、あんまりやり過ぎると倒れるんじゃないかと冷や冷やするけど、そんなことはお構いなしに、いつも通り全身全霊を込めて、後半に進むにつれてパワーアップしていく。
途中、ドラムの両脇に置いてある小さなキーボードを弾いていたけれど、キーボードに不具合でもあったのか、ピアノに駆け寄るYOSHIKI。「エリーゼのために」を弾いてドラムへ戻り、また一心不乱に叩く。かと思えば、すぐにピアノへ移って、今度は「月光」(だったと思う)をほんの少しだけ弾いた。そしてまた、ドラムへ。
このときの「エリーゼのために」と「月光」は、優雅なクラシックではなく、ドラムの延長という感じで「狂気」を感じさせる音色だった。
ドラムとピアノを行ったり来たりするYOSHIKI。がむしゃら、むちゃくちゃである。
最後の一打とともに、ステージから火花が上がった。

ドラムソロをやり切ったYOSHIKIが呼吸を整える中、ToshlがForever Loveを歌い始めた。激しいドラムソロのあとにバラードを持ってくる。立て続けにドラムを叩かなくてもいいようにという、YOSHIKIの体を考慮してのセットリストだとは思うけれど、この流れはまさにXJAPANの二面性を象徴している。
途中からBGMが入ったものの、1番はほぼToshlのアカペラ状態だった。にぎやかな音を排除して、感情のこもったボーカルを堪能できる「Toshlくんタイム」(←個人的に命名)。今回はこの「Toshlくんタイム」が何度かあって嬉しい限り。
1番が終わると、YOSHIKIがピアノを弾き、PATA、HEATH、SUGIZOもステージ上の階段に腰かけてギターやベースをつま弾いた。
ステージ後方の大きなスクリーンには、昔の写真が映し出された。
HIDEもTAIJIもたくさん写っている中、私が一番印象的だったのは、髪を逆立てていた頃のToshlとHIDEが仲良さそうに肩を並べている写真だ。写真の中の二人の笑顔を見て、安心した。
Forever Loveの間奏中、Toshlは客席に背を向け、スクリーンに映し出された自分たちの写真を見つめていた。
ねえ、HIDEはさ、きっと全部許してくれているよ。だから、Toshlくん、もうHIDEに対して責任や引け目を感じたりしないでさ、胸張って行こうよ。いつも私たちに「胸張れ!」って言ってるの、貴方なんだから。

Forever Loveに続けて、YOSHIKIがI.V.を弾いた。
恒例になっている、客席も巻き込んでのサビの繰り返し。
何度か続けていると、YOSHIKIはピアノをやめてToshlからマイクを受け取り、「We are!!」と叫びだした。
YOSHIKIが何度も「We are!!」を繰り返している間、Toshlがドラムを叩いていた。YOSHIKIがマイクを握って叫ぶときはToshlがよくドラムを叩くけど、ドラム、練習してるのかな。それとも、YOSHIKIを見ていれば叩けるようになるんだろうか。

体の奥底からほとばしるように、「We are!!」と叫ぶYOSHIKI。I.V.のサビは放っておいて、全力で「X!!」と答える私たち。

YOSHIKI「全然聞こえねーんだよ!」

YOSHIKI「HIDEにも、TAIJIにも聞かせろーっ!!」

この日、私が最も号泣したのは、YOSHIKIが「We are!!」と叫んでいるときだった。
これまでのいろいろな苦難を思い出して、「今ここにこうして再び彼らのライブに立ち会えていることは、何という奇跡だろう」と感慨深くて……なんてことは後から振り返って思うことだ。そのときは、自分が何で泣いているのかよく分からなかった。
かなしいとか嬉しいとか、溢れ出す感情がいったい何なのかは分からない。ただひたすらむせび泣いてしまい、YOSHIKIの叫びにも碌に応えることができなかった。

I.V.を聴くと、復活のときを思い出す。あの当時、嬉しかった。でも、手放しでは喜べなかった。
今は、手放しで喜べる。

だから、泣いているのかな、私。

I.V.の次のXでも、Toshlは弾けていた。Toshlだけじゃない。がむしゃらに、嬉しそうにドラムを叩くYOSHIKI。曲の終わりの方で、ステージ前方に出てきて3人並んで弾くPATAとHEATHとSUGIZO。そして、Xジャンプする客席。
今回はステージがちょっと見づらい二階席で残念だったけれど、客席が一体になってXジャンプしているのを眺めることができたのは、高い位置にいたからこそだ。そういう意味では、まんざら悪くもない。

Xのあと、アンコール待ちのとき、配布されているリストバンドが客席中で黄緑色にキラキラ光り始めた。近くの席からは「きれーい」という声が漏れ聞こえた。YOSHIKIが言ってた「何か起こる」って、これだったのか。

アンコールは、くつろいだ雰囲気で始まった。
YOSHIKIがピアノでScarlet Love SongとDAHLIAを少しだけ弾いて、DAHLIAはToshlがサビを歌ってくれた。DAHLIAもいいけど、Scarlet Love Songが聴きたかった。まだ生で歌を聴いたことがないんだもの。

DAHLIAを歌い終えたToshlが、ピアノの椅子に座っているYOSHIKIの隣に腰かけた。
YOSHIKIがマイクを奪って、

YOSHIKI「これ、俺の椅子」

Toshlがすかさずマイクを奪い返して

Toshl「これ、僕のマイク」

Toshlくんに一本!
って言うか、お前ら幼稚園児かよっ!
「これ、僕のマイク」ってToshlの言い方がめっちゃかわいくて、萌えた。

YOSHIKI「どう? Toshl、久しぶりのこういう場……Xのコンサートは」

Toshl「YOSHIKIはどう? 久しぶりのXのコンサートは」

ToshlはYOSHIKIの問いかけに答えないで、オウム返しに聞き返した。
YOSHIKIもその問いに答えず、他のメンバーに同じ質問をして回った。

SUGIZO「行き当たりばったり」

PATA「どうもこうもねーよ!」

HEATH「なかなかいい感じに仕上がってますねー」

YOSHIKI「相変わらず、みんな言うことがバラバラだなあ」

PATAの「どうもこうもねーよ!」は、間違いなく今回の2daysの迷言第一位でしょう、うん!

結局、ToshlはYOSHIKIの問いにはっきり答えずじまいだった。
今回のライブに対する思いは、簡単には言葉にできなかったのかもしれない。

YOSHIKIが改まった表情と声で、言った。

YOSHIKI「そうですね……Toshlも、自分も、PATAもHEATHもSUGIZOも、皆いろいろな想いを持って、このステージに立っています」

「Toshlも、自分も……」と、Toshlの名前を一番に挙げたところに、YOSHIKIの想いを感じた。

YOSHIKIは、Toshlに対して責任を感じているのではないかと思う。15〜20年前、Toshlを疲弊させた原因は自分にあるんじゃないかと、感じているように思えてならない。Toshlも確かに苦しんできた。でも、YOSHIKIだってToshlのことでたくさん思い悩んで、苦しんで、自責の念に駆られたこともあったのではないか。

もう、いいんだよ。苦しむ必要も、自分を責める必要もない。
いま、ここに、XJAPANのメンバーとしてともにステージに立っている事実、それがすべてだ。

しんみりした雰囲気で、ENDLESS RAINが始まった。
Toshlは、出だしの「I'm walking in the rain」だけ歌って、その先を歌えなくなってしまった。
マイクを客席に向けるでもなく胸の前で握ったまま、その場にじっと立ち尽くしていた。
ときどき歌おうと試みるけれど、声が詰まってどうしても歌にならない。喉がしんどいんじゃなくて、泣いていて、無理に歌えば涙声になってもっと泣いてしまいそうだった。
ニコニコ顔でマイクを向けてきたら、「いやいや、お前が歌えよ!」って心の中で突っ込む。
でも、立ち尽くすToshlの姿を見ていたら、「もう、いいよ。大丈夫だから」って抱きしめたくなった。

貴方が歌えないときは、私たちが歌えばいい。
だから、何も心配しないで。
大丈夫、貴方はちゃんと生きて帰ってきた。もう、大丈夫だから。

Toshlの代わりに、心の底から精一杯歌いたかった。
だけど、不覚にもENDLESS RAINの歌詞をところどころ忘れてしまっていて、おまけに、大声で歌ったら私まで涙声になりそうで、うまく歌えなかった。

ENDLESS RAINのあと、SUGIZOのバイオリンソロを挟んでART OF LIFEへ。
YOSHIKIがピアノを弾いているとき、スクリーンでは紅い薔薇の花びらが舞っていた。
そして、5人渾身のART OF LIFE。
最後の「in my life〜!」は、Toshlが残っている力をすべて振り絞って、体の底から放つ魂の叫びだった。

たっぷり3時間のライブだった。
4年前の日産スタジアムは、いちいち間があって、ちょっと間延びしている感が否めなかったけれど、今回はインターバルがあまりなく、アンコールの待ち時間も短かった。
セットリストも攻撃的だし、メンバーの気迫を感じられた。個人的には、Toshlが楽しそうに歌っていたのが嬉しかった。ただ、客席に歌わせる頻度がちょっと気になるけれど。
今回の横浜アリーナ・ライブはMSGの前哨戦と銘打ってあるけれど、前哨戦なんて言う生易しい雰囲気はどこにもなく、かなり良い出来だったと思う。
Toshlがどの曲でも初めにタイトルを叫んでいたのは、MSGを意識しての試みかな。

かなりお腹いっぱいなライブだったけれど、ほんの少し何か物足りないなあと思っていて、それはTearsを聴いていないからだ!と気づいたのは、最後の最後にSEでTearsが流れているときだった。
でも、まだまだ道は続いて行くんだ。いつか、またの機会にTearsは聴けるよね。

ライブの途中だったか最後だったか、ステージから客席にちょっとだけ伸びている花道(と呼べないくらい短い場所)にToshlが出てきたとき、確実に2回は目が合った!……と言い張っておく。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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