月に舞う桜
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2014年06月17日(火) |
YOSHIKI Classical World Tour Part1 東京公演(2) |
YOSHIKI Classical World Tour Part1 東京公演(東京芸術劇場)のライブビューイング・レポの続きです。
声量があって伸びやかなケイティの歌声は、なかなか素敵だった。ライブビューイングじゃなくて、生で聴いてみたかった。
ROSAが終わってケイティが退出すると、YOSHIKIがスタッフに「準備はいい?」みたいな感じで聞いた。が、スタッフは全員外国人なので日本語では通じず、英語で聞き直す。日本語と英語を織り交ぜながら進めるのも、結構手間のかかることだ。
で、何の準備ができてるかって言うと、XJAPANのメンバーはそろってるか?ってことだった! YOSHIKIに呼ばれて、ぞろぞろ現れる4人のオッサン……いや、世界最強のバンドメンバーたち。上手から順に、PATA、SUGIZO、HEATH、Toshlと並んだ。 来たよ、来た来た! 勢ぞろいしちゃったよ!! 登場するやいなや、ケイティ用のスタンドマイクを取って喋ろうとするToshlくん。さすが、MC根性が染みついております! すかさず、YOSHIKIが自分のマイクを渡す。
Toshl「どうも、XJAPANでございます」
まったくもって、ロックバンドのノリじゃない。お前ら、コミックバンドかコント集団か?って感じ。
Toshl「最近、YOSHIKIがMCうまくなったので、楽させてもらってます」
うーん、そうかなぁ、うまくなってるのかなぁ……(汗)。
SUGIZO「勢ぞろいしました。えーと、今日はいいお知らせもできそうですかね?」
おお! ライブだろうか、ベストじゃないアルバムの発売だろうか。期待が高まる!
まずは、改めてMSGでのライブが告知された。
YOSHIKI「えっと、10月にアナウンスした……」
いやいやいやいや、未来予知ですか! 10月はまだ来てないからね! 今日のYOSHIKIはいつにも増しておとぼけであった。やっぱり、MCうまくなってるとは思えないんだけど。と言うか、MCうまくないのがYOSHIKIの味だったりもするわけで。
YOSHIKI「あ、違う違う! この前アナウンスしたんですが、10月にNYのMSGでライブをやります」
で、Toshlから順番に抱負を言わされる。
Toshl「10月10日!」
ん? MSGのライブって10月11日じゃなかったっけ? 10日だったっけ??
Toshl「……は、僕の誕生日です」
あー、うん、そうだね。知ってる知ってる。 新喜劇ばりに、ずっこけそうになったよ!
Toshl「10月10日、は、僕の誕生日ですが、10月11日にマディソン・スクエア・ガーデンでライブできることになりました。これも、リーダーのYOSHIKIが頑張ってくれているおかげです。いつもメンバーを引っ張ってくれるので、僕たちはついて行くだけです」
確か、そんなようなことを言ったと思う。
HEATH「最初に笑いを取られちゃうと、ハードル上がるんだけど……めっちゃ頑張ります」
それから、SUGIZOとPATAも一言ずつ抱負を言った。 「もう帰っていい?」と退場しかけるToshlがYOSHIKIに止められて、期待が高まる「いいお知らせ」は、なぜかYOSHIKIではなくSUGIZOから発表された。
SUGIZO「秋に、日本でライブやるんですよね? 今年の秋です」
おお!! やっと日本でライブですか! 日にちも場所も明言されなかったけれど、「今年の秋に日本でライブ」と言うだけでも、かなりの大ニュース! わざわざ「今年の」と付け加えるあたり、スギ様はよく分かってらっしゃる。「いつの秋? 来年? それとも再来年?」って、疑っちゃうもんね。
これだけで、4人は退場してしまった。 MSGと日本でライブをやると告知するためだけに、ずらりと並んだオッサン4人……いや、世界最強のバンドメンバーたち。 全員で1曲くらい披露してくれたらいいのになあと少し残念だったけれど、曲もやらないのにXJAPANが勢ぞろいって、ある意味、贅沢だとも思う。
YOSHIKI「今日のコンサートは2部構成になっていて、次が第2部の最後の曲です」
え、いま、第2部の最後って言った?
YOSHIKI「あ、違った! 第2部の最後じゃあ、もう終わっちゃうよ! 第1部の最後の曲です」
うん、やっぱり、おとぼけ過ぎだから!
YOSHIKI「XJAPANが一度解散して、HIDEが亡くなって、自分はもうステージには立てないんじゃないか……裏方に徹しよう、そう決めました。そんな時に、奉祝委員会の方からこの曲の依頼が来ました。自分にできるだろうか、そう思って不安もあったけれど、家族とも相談して、依頼を受けることに決めました。この曲は、もう一度ステージに立つきっかけとなった、大切な曲です」
YOSHIKIは、Anniversaryをそんなふうに紹介した。 今上天皇の在位10周年を祝う曲をYOSHIKIが作曲すると公表されたとき、有識者数名(東大教授?)がYOSHIKIに批判的な公開質問状を出した。 私は、その公開質問状の中身を詳しく知らない。知らないからこそ、あえて、「質問状の中には的を射た意見も含まれていたのかもしれない」と述べておく。 ただ、あの頃、誰に何を言われようが、そんなことは全部どうでもいいと私は思っていた。 YOSHIKIはぼろぼろに苦しんでいて、もうステージには立てないかもしれないほど精神的に追い込まれていた。そんなときに、天皇も政治も思想も右も左も、そんなことはどうでもいいし、そんなことを全部超えて、YOSHIKIを救えるものがあるなら、それでいい。 こんな言い方をしたら一部の人たちにものすごい反感を買うんだろうけど、YOSHIKIが少しでも前に進めるなら、天皇でもなんでも踏み台にしてほしいと思った。 いや、ちょっと違うかな。「天皇でもなんでも」じゃなくて、天皇くらいじゃないと、踏み台にはなり得なかったかもしれない。天皇の奉祝曲というくらいに大きな仕事でなければ、YOSHIKIがもう一度立ち上がるきっかけにはならなかったかもしれない。
きっと、いつだって、手を差し伸べているものは存在しているのだけれど、大切なのは、その手をつかむタイミングを逸しないことだ。あの頃のYOSHIKIは、差しのべられた手をしっかりつかむだけのエネルギーを回復させていたということだろう。
Anniversaryは、ストリングスの演奏で始まった。 曲が始まるとき、YOSHIKIがストリングスのメンバーの方を振り向いて、手で合図を出した。 他の曲でも、腕を軽く振ったり指を伸ばしたりして何度か合図していた。 YOSHIKIの動きは、「どう見られているか」を常に意識して、指の先まで計算されているように思う。そんな、優雅な動きだ。
曲の後半、ピアノの雄大な調べが流れる中、私の頭の中に広がった光景は、穏やかに凪いだ海だった。 どこまでも静かに広がる大海。その海に、真っ白い帆を張った一艘の帆船が浮かんでいる。甲板に立って行く手を見つめているのは、YOSHIKIだ。 荒波の日も、暴風雨に見舞われた日もあっただろう。どんな波も乗り越えて、ようやくたどり着いたのが、この凪いだ海だ。
Anniversaryを聴きながら、私はこれまでのYOSHIKIの波乱万丈を想い、これから先の、なるべくなら荒波の少ない日々を願った。
(まだ続く)
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