月に舞う桜
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家の前の景色は、桜の葉で一面黄緑色だ。若々しい葉の色は、希望を感じさせる。 でも、今日の私が感じている希望は、「これから先の人生にどんな素晴らしいことでも起こり得る」という類の未来志向ではなくて、「ずっとこんな日が続けばいいのに」という、現在に閉じ込められた感覚だ。 それがいいのか悪いのかは、何とも言えない。
絶望している日も希望に満ちた日も、本当はただ季節が等しく移り変わっているだけだ。すべては、気の持ちよう。 けれど、人の心は勝手に季節に左右される。
春、晴れた日は、日が長くなったことに驚く。 今は夜の6時過ぎだけど、まだ4時くらいなんじゃないかと錯覚してしまう。 春はやっぱり、日中を窓のある部屋で過ごすのがいい。 いや、春だけではなくて、夏も秋も冬も、たぶん。 窓があると、自然と外に目を向ける。そして、視線が上に行く。そんな些細なことが、生き物としての人間にとってはとても大事なことなのではないかと思う。
明日はまた、窓のない部屋で過ごさなくてはならない。
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