月に舞う桜

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2014年04月28日(月) 春の夜に侵される

バタバタした一日だった。

社長が鬱陶しい。

気分転換に、会社帰りに近くのお店をうろうろ回った。

洋服を見ていてもアクセサリーを見ていても、そのお店にバッグがあれば、私はいつの間にかそちらへ吸い寄せられてしまう。
バッグを見ると、何であれもこれも全部欲しくなってしまうのだろう。洋服や靴やアクセサリーなら、そんなことはないのに。

GUは安い。安すぎる。あの値段を見てしまったら、他のお店では買う気がしなくなるくらいに。
とてもかわいいノースリーブのカットソーがあった。商品の現物を見る前に、ローラが着ているパネルを見て、惚れた。
ローラがモデルとして本気を出すと、何気にすごい。何でも着こなす。どんな洋服でもかわいく見えてしまう。

物欲が急上昇していて危険なことは自覚していたので、ぐっと自分を抑え込んで、何も買わずにショッピングモールを出た。

通りがけに、花屋があった。
例えば、5月2日にピンク色の花を買ったら、少し早めの母の日のプレゼントだと思われるのだろうか。
そんなことを考えたら、急にかなしくなって、人が行き交うのも構わずにワーワー泣きたくなった。

外に出て、暗い空を見上げた。
空。
空は、昼でも夜でも広すぎる。

誰かが隣にいてくれたらいいのに。
誰か、は、家族でもない友達でもない。岡田准一でもなければ、ピンクの花を捧げる人でもない。
その誰でもない、誰か。

別のショッピングモールへ行って、あまり真剣にではなく洋服を見て、やはり何も買わずに出た。

空は相変わらず広かった。

私は急に、一人で気ままにお店を冷かして回れることや、買うも買わないも自由に決められることが、嬉しくてたまらなくなった。
このままどこまでもフラフラ出かけて行って、一人でも生きていけるような気さえした。
ほんのちょっと前に「誰かがいてくれたら」と願ったことなんて、さっぱり忘れて。

春の香りには、麻薬の成分でも混じっているに違いない。
希望とエネルギーに満ち溢れた怪しげな香りに侵されて、いつもは閉じている脳のどこかが開いてしまうんだと思う。
正負を問わず、エネルギーが過剰になる。

まだまだあちこち買い物したい。小説を書きたい。本を読みたい。録り溜めた映画を観たい。

それでも結局、そのすべてが中途半端なまま、私は誰かを待ってしまうんだろう。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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