月に舞う桜

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2011年08月07日(日) 儀式と覚醒

わりと、周りから「桜井さんは大丈夫」と思われている…らしい。

あたしは、変にプライドがあって、実は負けず嫌いで頑固だ。
だから、「大丈夫な顔」を見せる。
そりゃあ、気の置けない人たちには「大丈夫じゃない顔」も見せて、愚痴を吐くことだってあるけれど、最終的には「大丈夫な顔」を見せていたい。


だけど、本当は、プレッシャーに押しつぶされそうになるときが、ある。
新人が入るたびに、「この教え方で問題ないだろうか。理解してくれるだろうか。ドロップアウトしないで一人立ちしてくれるだろうか……いや、ちゃんと一人立ちさせなくちゃ」と、プレッシャーに襲われる。

誰に何を言われたわけでもない。
ただ、勝手にプレッシャーを呼び込んで、最初の1,2日は実は逃げたくなる。

それに、あたしは人見知りをするタイプだし、人に対する好き嫌いが結構あるほうだ。
だから、どんな新人が来るのか不安にも、なる。「手に負えないような奴が来ちゃったら、どうしよう」とか、「どうしても自分とそりが合わない人だったら、2ヶ月間どうやって乗り切ろう」とか考え始めればキリがない。
「立場上、こちらから積極的にコミュニケーションを取らなきゃ」とも思い、それがまたプレッシャーを呼ぶ。


もともと、新しい環境に入っていくのは得意じゃない。

クラス替えの時期、大学に入るとき、就職したとき……環境が変わるときには決まって、夜になるとさめざめと泣いていた。
別に、新しい環境が嫌なわけではなく、深刻に思い悩むほど不安なわけでもなく、泣くのはある種の儀式なのだろう。

泣くことによって、あたしは気持ちを新たにし、覚悟を決めるのだ。

儀式なのだと分かってからは、むしろ積極的に泣いてみることにした。

泣いて、「あぁ、あたしはやっぱり不安がってるし、プレッシャーなんだな」と自覚すると、少しすっきりする。


すっきりして、それから思い出すのは、YOSHIKIだ。

ライブで観た、ドラムソロのYOSHIKIの姿。
肉体的な痛みも精神的な疲労や苦しみもすべて振り切って、一心不乱にドラムを叩き続けるYOSHIKI。
「うわぁーーーーーっ!!!」と魂の叫び声を上げて、汗を飛び散らせながらスティックを振り下ろす、あの姿。

自分の内側に意識を集中させると、奥の方からYOSHIKIの姿が浮かび上がってくる。

それで、あたしは覚醒する。

そうだ、あたしは無敵だったんだ。
YOSHIKIが限界を超えてドラムソロをやり切るように、あたしだって、やればできるんだ。

自分に言い聞かせれば、いつしかそれは確信になる。

そうして、「大丈夫な顔」に戻る。
プライドも自信も過剰で、負けず嫌いで頑固。それが、あたし。
このあたしに、できないはずがない。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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