月に舞う桜

前日目次翌日


2010年08月16日(月) 真夏の夜<1>

X JAPAN WORLD TOUR Live in YOKOHAMA 超強行突破 七転八起〜世界に向かって〜

2日目 真夏の夜

セットリスト↓
新しいオープニング
Jade
Rusty Nail
DRAIN(ToshI,PATA,HEATH)
Forever LoveアコースティックVer.(カルテットXJAPAN without YOSHIKI)
ピアノソロ(YOSHIKI)
Tears

Born To Be Free
ギター&ベースソロ〜Love Replica(PATA,HEATH,SUGIZO)
ドラムソロ(YOSHIKI)
I.V.
--アンコール--
おまけのUNFINISHED
X(XJAPAN with TAIJI)
ENDLESS RAIN
Tears 英語Ver.(SE)
もう一曲SE(曲は忘れました)


ライブ2日目。
1日目よりさらに暑い。暑いのに、開場が押して30分くらい待たされた。
開場を待つ間、スタジアムの中からLove ReplicaとDRAINのリハ音が聞こえた。
今日はDRAINもやるのかあ……って、リハが聞こえたらセットリストがばれて、「何の曲をやるんだろう」ってワクワク感がちょっと減るじゃん!
YOSHIKIが出ない曲のリハをやってるってことは、YOSHIKIだけ既にリハが終わって休憩中かしら。YOSHIKIのリハが押したから、他のメンバーのリハがまだ終わってないのかしら。
なんてことを頭の片隅で考えながら、暑さと戦う。なんせ列に並んでるものだから、木陰などなく炎天下なわけで。

4時ごろ開場。
大型スクリーンには、1日目と同じようにパチンコのCMとメイキング、ロラパルーザの映像が流れていた。
1日目は平常心で観ることができたのに、この日はロラパルーザの映像でやられた。「念願のアメリカ進出がやっとかなったんだねえ。いろいろあったのに全部乗り越えて、よく頑張ったねえ」と、子供の巣立ちを見守る親のような心境になってしまい、涙ぐむ。
やばいよ、ライブ前から泣いてどうするんだ。

開場が押したわりには、1日目とほぼ同時刻に開演した。
新しいオープニング曲からRusty Nailまでは、同じような流れだった。
Rusty Nailのとき、ToshIが両腕を広げて全身で私たちの声を受け止めようとする姿と、自分のお腹を指して「腹から声出せ!」って合図したのが印象的だった。
ToshIは前日に引き続き、声の調子が良いみたい。めっちゃ滑らかで、通る声!
それから、HEATHが羽織っていた赤と黒のチェック柄のノースリーブが目を引いた。SUGIZOは、前日の暑さがこたえたのか、今日は初っ端からノースリーブだった。
それとは対照的に、ToshIくんは全身黒ずくめ。革の手袋までしちゃって、大丈夫かしらと心配になる。だって、本当に暑いんだから!
今日もやっぱり「会いたかったぜ、ニッポン!」だった。とうとう「会いたかったぜ、横浜!」は聞けず。

YOSHIKIとSUGIZOが退場して、残った3人でDRAIN。
この曲では、ちゃんとHIDEの映像が出てきた。前にも書いたかもしれないけど、私はHIDEがサビで「DRAIN! DRAIN!」と歌うところが好きだ。
ToshIくん、ちょっと遊び心のある歌い方をしていた気がする。うまく言えないけど、サビを少し崩してみたりとか。それは「きちんと歌うとしんどいから崩す」ってことではなくて、むしろ「余裕があるから」という印象を受けた。

DRAINのあと、いったん3人は退場。
しばし待つと、ラフな格好に着替えたToshIが出てきた。

ToshI「暑い……」

そりゃ暑いよ、あんた長袖着てるじゃん!

ToshI「お前たち、あつい夜をありがとう」

それって「熱い夜」ってこと? それとも「暑い夜」?
前者なら「ありがとう」って言葉は嬉しいけど、後者なら、それは私たちのせいじゃありませんよ?

ToshI「はい、PATAちゃん」

PATAが登場。

ToshI「はい、HEATH」

HEATHも登場。いやーん、やっぱり超かっこいいよ!(私、男性の二の腕にヨワイんです)

ToshI「はい、スギ様」

なんで、SUGIZOだけスギ様!? いや、確かにそう呼ばれてはいるけどさ。PATA&HEATHとの扱いの違いは一体……。
スギ様、登場。スギ様らしく、腰に手を当ててかっこつけてポーズを決める。

ToshI「さすがスギ様、流し目が違うぜ」

いやん、流し目スギ様、カッコいい!(この浮気者! って突っ込みは無しでお願いします)
後日、母にこの話をしたら「杉良太郎とかけてるの? 流し目と言えば杉良太郎でしょ」と言われた。
ToshIくん、そうだったの? 母に言われるまで、ちっとも気付かなかった。私の中では、流し目と言えば松平健なので。ジェネレーションギャップだね。ToshIくん、やはり15歳の差を乗り越えるのはなかなか大変だわ。

ToshI「今日はこの会場のほかにも、ネットで観てる奴もいるんだ。お前たちの声、ネットの向こうで観てる奴にも聴かせてやってくれー! ネットーー!! ネット、大喜びだぜー」

うん、そうだね。私がネット組だったら、喜んでたと思うよ。

ToshI「じゃあ、スギ様がバイオリンを弾いてくれるので……カルテットXJAPAN without YOSHIKI」

お、今日は「without YOSHIKI」が付きましたか。
そんなわけで、スギ様のバイオリンがイントロを奏でて、4人のForever Loveが始まった。
今日のForever Loveは、前日にYOSHIKIとやったときとは歌い方が違っていた。前日はピアノ伴奏に合う正統的な歌い方だったけど、今日はバイオリンの音色に合わせて、もっとねちっこい……ってのは言いかた悪いけど、「ま」をたっぷり取って、より抑揚のある、感情を込めた歌い方だった。ときには声をどこまでも伸ばして、ときには歌うのではなく愛を囁き語りかけるように。
前日がYOSHIKIバージョンのForever Loveなら、今日はToshIバージョンのForever Loveといったところだろうか。
曲の後半、会場が水を打ったように静まり返った。いつもなら皆で歌うところだけれど、ToshIの歌にどっぷり魅入って、身動きできずにいたのだ。あれは、「歌」を越えたパフォーマンス……「どんな」と言うなら、一人芝居の舞台を観ているような感覚だった。

4人が退場して、入れ替わりにYOSHIKIが登場。
1日目は青い薔薇だったけど、今日は赤い薔薇を持っている。YOSHIKIが手に持つなら、やっぱり青より赤い薔薇の方が似合う気がするよ。
薔薇を客席に投げながら、早くもアリーナへ下りてしまうYOSHIKI。今日は暑さにも負けず、最初からテンション高いのかしら。
ピアノに戻って、Tearsを弾く。少しずつ大きくなっていく、会場の歌い声。
前日と同じように大合唱しながら、「今日もTearsはこれで終わりかな」と半ば諦めていた。でも、サビが終わるとYOSHIKIがスタッフにキューを出し、Tearsのイントロが流れた。
良かった。今日は、ちゃんとやってくれるんだ。
再びToshIが出て来てしっかり伸びのある歌を聴かせてくれて、PATAとHEATHも登場。
ToshIが、とっても楽しそうに歌っているのが印象的だった。この曲、好きって言ってたもんね。
私も、Xのバラードの中ではTearsが一番好きだ。メンバーも客席も含めてみんなが一体となって、喜びであれ悲しみであれ、何か同じ一つの感情を共有している感じがする。だから、いずれはSUGIZOも出てくるようになればいいなと願っている。
ライブでサビを歌うのも、ENDLESS RAINよりTearsの方が好きだし、感極まる。ENDLESS RAINは、ちょっと飽きてしまうのだ。

(ところで、Tearsを始めるときにYOSHIKIが右手人差し指を出してスタッフに合図する仕草は、とてもセクシーだと思う。あの、右の肩から指先までの流れは、本当に美しい。でも、曲の最後のYOSHIKIの生セリフは、聴いていて気恥ずかしくなるので、個人的には要らないと思ってしまう。その前の、生じゃないSEのセリフは良いんだけどね)

暗転して、紅のイントロへ。
ステージが暗くなってYOSHIKIの姿が見えなくなるのと入れ替わりに、スクリーンにHIDEの姿が。
今日は、泣かなかった。いつものようにそこにHIDEが映し出されてギターを弾いていることにただ安堵して、ただ嬉しくて、笑顔で迎え入れることができた。
紅のときは、いつも無我夢中だからあまり覚えていない。嵐が通り過ぎるみたいに、あっと言う間に終わってしまう。増幅していくXJAPANと私たちのエネルギーは、本当に嵐みたいだ。
改めて、紅は偉大な曲だ、と思う。20年以上経ってもまったく色あせず、こうして多くの人の心を鷲掴みにする。16年前、私はこの曲にノックアウトされた。あのときから魅力が少しも衰えないどころか、どんどんパワーアップして、私はまだまだ深みにはまっていっている。
最初のサビのとき、ToshIはYOSHIKIの真後ろで歌う。YOSHIKI、あんなにすぐ耳元でToshIの歌声を聴くことができるなんて、羨ましい……って言うか、うるさくないのかしら。必死でドラムを叩いているときに耳元であの高い声を聴かされたら、結構、頭がキーンってなるんじゃないの。

ToshI「なかなかいいぜー! お前たちー! 今日は全身全霊でぇ、暴れん坊将軍で行けよーーー!! それじゃあ、俺たちの新曲いくぜー」

ToshIがそう叫んだとき、YOSHIKIは疲れてステージの床に寝転がっていた。が、ToshIが新曲いくと言うもんだから、「え、もう!?」みたいな顔しながら慌ててピアノの前へ。
そして、しばしストレッチ。

ToshI「YOSHIKIが体操中だから……YOSHIKIを応援してくれよー!」

YOSHIKIが、Born To Be Freeのイントロを弾く。

ToshI「ピアノ、YOSHIKIー!! 限界を越えて行くぜーー!!! てめぇら、気合い入れて行けーーーーっ!!」

美しくて息が詰まるようなピアノの旋律をバックに、ToshIの叫び。字だけ見ればミスマッチのようだけど、これがXJAPANの世界。破壊的で、だけどギリギリのところでバランスを保ち、破滅に向かいながらも、表しているのは強烈なまでの生のエネルギー。
ピアノをバックにあんなふうに腹の底から叫ぶヴォーカリストは、ToshIくらいだろう。
限界を越えて、どこまでも行って。常識も何もかもぶち破って、ただ己の進みたい方へ。

ToshIがタイトルをシャウトして、YOSHIKIがドラムを叩く。
前日と同じように、ステージセットの天井から吊るされた檻の中で、セクシーな外人ねえちゃんが踊っている。
それから、ドラムの後ろのスクリーンでは、何か大きな未知の生命体のようなものが蠢いていた。何本もの脚を広げて、いままさに生れ出ようとしているみたいだった。

激しくて前向きな曲なのに、泣きたくなるのはどうしてだろう。
Xの曲は、すべてそうだ。バリバリのロックでも、どこかかなしい。生きることや愛することの、本質的なかなしみが宿っている。生きることは死に向かうことで、愛することは、いつかその愛するものを失うように宿命づけられているということ。


(続く)


桜井弓月 |TwitterFacebook


My追加

© 2005 Sakurai Yuzuki