月に舞う桜
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(つづき)
アンコールは今まで使っていたステージではなく、アリーナ後方に設けられたピラミッド状の小さなサブステージで始まった。全体がキラキラ輝くサブステージの真ん中から、YOSHIKIとToshIとピアノがせり上がってきたのだ。 あのサブステージは、アリーナ後方と北側スタンドの人たち(つまり、メインステージから遠い人たち)にとっては感動的なサプライズだったと思う。 DAHLIAのフレーズを弾くYOSHIKIと、傍らに立つToshI。 そして、Forever Loveが演奏された。 そのあと、YOSHIKIの伴奏でI.V.へ。 いつものようにサビを合唱していると、二人がサブステージから下りてメインステージへ歩き始めた。YOSHIKIは東側のアリーナとスタンドの間の通路を通り、ToshIは私のいる西側通路を行く。 うわっ! ToshIくんが近くを歩いてるよ! わーい! 歩きながら、ToshIくんはスタンドの私たちに向かって手を振ってくれた。あのとき、絶対目が合った……はず! (頼むから、そう思わせといて下さい。「みんな同じこと思ってるけど、目なんか合ってないよ!」なんて突っ込まないで!)
ToshIに「HEATHが歌ってないよー」って言われてマイク向けられても、歌うんじゃなくて「in the rain……find a way……」って棒読みなHEATH。 暑いんか? やる気ないんか? でも、カッコいいから許す! I.V.のイントロが始まると、ToshIはくるくる回りながら「ウァーーーーー!!!」と絶叫した。全身からありったけのエネルギーを放出するみたいに。もしくは、叫びに込めた気合いで暑さを吹き飛ばそうとするみたいに。
I.V.が終わっても、音は途切れなかった。その流れのまま、ToshIが叫ぶ。
ToshI「今日はー、スペシャルなゲストが来てるぜー!! onベース、TAIJIーー!!!」
TAIJI登場。 湧き上がる客席。両腕を突き上げて声援に答えるTAIJI。 続けてToshIが紹介した。
ToshI「onベース、HEATH!!」
HEATHも腕を上げる。そして、ステージ中央で二人のベーシストががっちり握手を交わした。
ToshIがTAIJIの次に間を置かずHEATHの名を呼んでくれたこと、嬉しかった。 XJAPANのベーシストはあくまでもHEATHだ。 TAIJIがゲスト出演することを知ってから、ずっと複雑だった。 私がファンになったのは1994年。すでにXからXJAPANに改名していて、ベーシストはTAIJIではなくHEATHだった。 だから、私はあまりTAIJIに思い入れがない。 TAIJIが今もなお絶大な人気があることは知っている。ファンの多くがTAIJIを待ち望んでいたことも知っている。TAIJIが再びYOSHIKIと同じステージに立てるようになったのは、喜ばしいことだとは思う。昔のライブDVDでTAIJIの存在感を目の当たりにして、本当にすごい人だったんだと分かっているつもり。 だけど、今回のゲスト出演をどうしても手放しで喜べなかった。 TAIJIが出るのは、復活ライブで外国人ギタリストがゲスト出演したのとは意味合いが違う。 XJAPANには、ちゃんとベーシストがいる。ベースって、二人もいらないでしょ? なんで今さら「XJAPANの」ライブに出るの? 再結成のとき、YOSHIKIは「同窓会にはしたくない」って言ったのに、なんで今さら出すの? ライブに出るんじゃなくて、単に「YOSHIKIと再会して、楽しく酒を飲んだ」ってだけなら、私も素直に喜べたのに。
こんな思いがあり、どうしてもTAIJIの名前を叫ぶことができず、このあとずっと意識的にHEATHの名前ばかり叫んでいた。
続けて、ToshIがメンバー紹介。
ToshI「onギターPATA! onギターSUGIZO! そしてonギターHIDE! onドラムスYOSHIKI! onヴォーカルToshI!」
HIDEを呼ぶときは、天を指差した。
ToshI「7人のXJAPANで行くぜー! FEVER XJAPANで行くぜー!!」
ここでも、私は「ToshIくん、それは違うでしょ」と思ってしまう。「7人のXJAPAN」じゃなくて、「6人のXJAPANプラスTAIJI」でしょ、って。TAIJIはXのメンバーだったけど、XJAPANのメンバーじゃないんだから。 何はともあれ、スポンサー様への気遣い、ご苦労様です。
そんなこんなで、XJAPAN with TAIJIによる「X」が始まった。 曲が始まったら、それまで感じていたモヤモヤを忘れて没頭できた。 間奏でいつものようにToshIがメンバー紹介したけど、7人もいると紹介が時間ぎりぎりで大変みたいだった。 ちゃんと、HIDEの「飛べ飛べ映像」もあった。ここらへんが、超強行突破!? 曲の最後の方でYOSHIKIが「We are!!」と叫んでいるときは、ToshIがドラムを叩いていた。ToshIくんがにこにこしながらドラムを叩く姿、かわいくて好き。 で、またマイクをToshIに戻してToshIが「We are!!」と叫ぶと、YOSHIKIよりはるかに声が高いのが際立つんだよね。さすが!!
ToshIが「また会おうぜ!」と手を挙げて、メンバーが退場した。 でも、照明は落ちたままで、終了のアナウンスもない。ってことは、まだ続くのね!
しばらく待つと、再びメンバーが登場。 そして、花道で追いかけっこするYOSHIKI(逃げる)とToshI(追う)。
ToshI「今日のコンサートは、再会の夜。お前たちと再び会えて、嬉しいぜー!! そして今日は、旧友もベースを弾きに来てくれた。そして、hideちゃんもー! そしてお前たちと会えて、本当に嬉しかったぜー!! ありがとよー!!!」
ToshIが言い終わると、YOSHIKIが「マイクちょうだい」の合図をした。
YOSHIKI「みんな元気? 暑い中、待たせてごめんね」
いえいえ、待つのは慣れてますから! って言うか、今日なんて待ったうちに入らないですから!
YOSHIKI「何かいろいろ……いろんなことがたくさんあったけど、ホントにみんなのおかげで、少しずつだけど自分たちの夢を叶えられるように、前に進んで来れてます。本当にどうもありがとう。これだけいっぱいドラマがあって、でもこれだけファンがいてくれるバンドって……たぶん世界に一つしかないと思う」
YOSHIKIは、涙をこらえながら、ゆっくり噛みしめるように言った。 このライブを開催するまで、本当にいろんな大変なことがあったのだと思う。私たちには計り知れないような問題も、たくさん。
ToshI「ともかくお前たちは、世界一のファンだぜー!!」
YOSHIKIの言葉を引き継ぐように、ToshIが叫んだ。 そして、ENDLESS RAIN。 ミラーボールの光に照らされながら、夜空に響く大合唱。 曲が終わると、SEでTearsの英語バージョンが流れ始めた。 しばしそれを聴いたのち、メンバーが思い思いにステージや花道を歩いて手を振った。 YOSHIKIは赤と青の薔薇を持ってアリーナに下り、走り出した。途中、なぜか赤い三角コーンを頭にかぶってみたりして。とうとう暑さで頭やられたか??
ステージに再びTAIJIが出てきた。フィナーレにも出てくるのか……。 アリーナから戻ったYOSHIKIと抱き合い、YOSHIKIの頭をぐしゃぐしゃっとなでるTAIJI。TAIJIは立派な大人に、YOSHIKIはほんの少年のように見えた。 それから、HEATHとTAIJIが抱き合った。その様子を見て、私はやっと、TAIJIの出演を受け入れられた気がした。 6人がステージに並んで、万歳。HEATHとTAIJIが真ん中に立っていた。 そのとき、花火が上がった。思わず花火に目を奪われてしまい、万歳をあまりちゃんと見ていなかったのが心残りだ。 最後の大きな花火をメンバーと一緒に見届けて、ライブは終了した。
終了時間は、予定の8時半より前だった。2時間半くらいの、短めライブ。 ちょっと物足りないなあ。1日目だから、こんなもんか。なにせ皆さんいい年なので、明日に余力を残しておかないとね。 というわけで、2日目に期待したいところ。
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