月に舞う桜
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私をバカにする奴は、許さない。私の大切な人や大切なものを否定する奴も。 彼らは私の世界を広げてくれる。それはつまり、私を救ってくれるということ。そんな彼らを少しでも否定することは、私をバカにし、蔑ろにするのと同じことだ。だから、許さない。
感情を抑えることができずに他人や物に破壊的なエネルギーを向けてしまう、そんな人たちの心が、ときどき解ってしまう。「誰でもよかった」というぞっとする言葉さえも、何となく理解できてしまう。 解ってしまう自分が、怖い。 境界線を越えるか越えないかの違いだけで、私と彼らにはいったいどんな大きな隔たりがあると言うのだろう。
抑えても抑えても、沸騰した湯がやかんから吹きこぼれるように、「それ」は私の体から溢れ出ようとする。
他人を壊しては、ならない。 だからせめて、最悪の場合は物にエネルギーを向けるように、と、辛うじて繋ぎ止めた理性で考える。 でも本当は、どうしてもどこかへ刃を向けずにいられないなら、それは人や物を含めた「他者」へではなく、自分へ向けるべきなのだ。
「ぼくを見て! ぼくを見て! ぼくの中の怪物がこんなに大きくなったよ!」――浦澤直樹『MONSTER』より。
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