月に舞う桜
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団地と自転車置場の間の通路に、仰向けで絶命したセミや干からびたミミズがへばりついていて、夏の終わりと無常を想う8月の末。
おととい、テレビで皆既月食を見た。 赤い月を見ていると、不安を煽られるようで何だか怖い。よくないことが起こるような気がして、心がざわざわする。抗うことのできない大きな力に、世界が覆われてしまいそうだ。 それでいて、台風の前みたいに無性にドキドキする。不謹慎にも、大きな力を待ち侘びてしまうような興奮。
もちろん、赤い月が本当に特別な力を持っているとは思わないけれど、もしかすると、あれはやっぱり不吉な予兆だったのかもしれない。詳細は書けないけれど、「皆既月食の呪い」が起きてしまった。 あーいやだいやだ。気が重い。
でも、それこそ天体規模で考えれば、どのみち取るに足らないことだ。たいしたことはない。 たいていの場合、物事は「案ずるより産むが易し」だ。 苦手だと思っていた人が、近くで接したら案外温かみのある人で好印象だったり、実際やってみると予想よりずっとスムーズに事が運んで、「何をあんなに怖がっていたんだろう」と不思議になったり。そういうことを、私はこの一年で何度も経験してきた。 だから、今度もきっと。 ただ今は、来たる事態に備えてぐちぐち喚いて不安を分散させているだけ。それは、心の準備に必要不可欠な儀式なのだ。
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