月に舞う桜

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2007年08月19日(日) 目力

夏休み用に借りてきたDVDの最後の1本、『花よりもなほ』を観た。
監督は『誰も知らない』でカンヌ映画祭の賞を取った是枝裕和、主演は岡田准一。岡田くん目当てで借りたのは言うまでもない。

やさしくて、静かな映画だった。生きるの死ぬのといった声高な叫びはない。時代劇だけど派手な立ち回りはない。あるのは、人間の生活と、感情と、豊かな表情。主演は岡田くんだけど、登場人物一人ひとりが主役だった。一人ひとりに物語があって、一人ひとりの表情が本当に生き生きしていて、「あぁ、生きていくっていうのは素朴で健気で、たくましいことなんだな」と思った。
人間を大切に見つめる眼差しが感じられて、好きだ。

贔屓目かもしれないけれど、岡田くんが現代劇と違って「岡田准一オーラ」を発していないところが良かった。それから、台詞が少ない中できちんと演じられているところも。
何を観ても俳優の名前がちらつくっていうんじゃなく、観ている間は観客に名前を忘れさせるのが本物の俳優だと思うし、私はそういう人が好きだ。トム・ハンクスとか、阿部寛とか。
岡田くんが武士の恰好をすると、ときどき真田広之を思わせる目をする。『ラスト・サムライ』では、トム・クルーズでも渡辺謙でもなく、真田広之に惚れたのだ、私は。あの目が好き。あの、目力が。
目力があって、でも、岡田くんの目はやさしい。子供を見つめるときの表情とか。

あとは、浅野忠信の存在感がすごい。台詞は一言二言しかないのに、そこに佇んでいるだけで存在感がある。
すごいと言えば古田新太で、私が今回借りた『木更津キャッツアイ』、『真夜中の弥次さん喜多さん』、『花よりもなほ』の3本すべてに出演しているのだ。どんだけ〜!


桜井弓月 |TwitterFacebook


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