月に舞う桜

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2007年07月20日(金) 北海道旅行:2日目・札幌編

北海道旅行2日目は札幌の日。

小樽のホテルでバイキング形式の朝食を取り、荷物をまとめてチェックアウト。小樽の町に別れを告げて、快速エアポートで札幌まで行った。
この日も、快晴ではないものの、雨の心配がない程度の曇り空だった。
札幌駅は、やはり小樽とは比べものにならないほど綺麗で大きく、人も多い。私は、無性にワクワクした。小樽に着いたときよりもずっと。

当面必要のない荷物を駅のコインロッカーに入れ、地下鉄へ向かった。地下鉄の車内には風鈴が吊るされていて、冷房の風でちりんちりんと音を立てていた。風がわりと強いので、ちょっと落ち着かない……。
札幌駅から地下鉄を乗り継いで行く目的地は、「白い恋人パーク」だ。
白い恋人パークは、あの有名な北海道銘菓「白い恋人」の石屋製菓がやっている大きな施設で、その素敵な建物をテレビで見たときに「ここは絶対行かねば!」と母と決めたのだった。
最寄り駅から徒歩10分強。その洋風の建物は、遠くから見つけても「うわ、素敵♪」と思わず漏らしてしまうくらい、おしゃれで立派で、そして何ともメルヘンだった。
建物の傍まで来ると、クッキーの甘くて香ばしい香りに包まれる。この建物の中で、実際に白い恋人が作られているのだ。

大まかに言うと、パークにはローズガーデンとチョコレートファクトリーとチュダーハウスがある。庭も建物も、伝統的なイギリス様式で作られているらしい。
ローズガーデンだけなら無料で入ることができ、建物に入って見学する場合は入館料が600円必要だ。この入館料の600円を惜しんではいけない。入ってすぐに元が取れるから。
入館手続きを済ませると、白い恋人が一人一枚もらえる。係員が車椅子用エレベーターまで案内してくれ、見学順路を説明してくれる。

見学は、まずチョコレートファクトリーから。
ここには、西洋のアンティーク食器や、絵画や陶器などの美術品が展示されているほか、足元には凝った柄の絨毯が敷かれ、2階中央の大ホールには大きな噴水と泉がある。まるで、西洋貴族のお屋敷か宮殿に来たみたいだ。
でも、メインはもちろん美術品ではなく、あくまでもチョコレートだ。壁にはチョコレートに関するあらゆる資料(歴史、各国の消費量、さまざまな雑学など)が張られ、昔のパッケージや缶もたくさん展示されている。
3階には、カカオ豆からチョコレートができるまでを再現した大掛かりなジオラマがあり、その先では白い恋人の本物の製造ラインをガラス越しに見下ろすことができる。
目の前で、白い恋人が作られているのだ。白い恋人が1枚1枚作られ、コンベヤーの上を流れ、最後はお馴染みの柄で包装される。ガラス張りにして製造過程をすべて見せるというのは、商品への自信の表れなのだなと思った。
とにかく、どこを見ても何を見ても飽きないように、隅々まで工夫された造りだった。

チョコレートファクトリ−の4階には体験工房とお土産屋さんとカフェがあり、私たちはそのカフェで休憩することにした。
そこでしか食べられないというチョコレートケーキを食べていると、窓の外に見える時計塔に何やら変化が。1時ちょうどになり、からくり時計が動き出したのだ。私たちは運良く窓際の特等席に座っていたので、その様子をじっくり見ることができた。開いた塔の一部から熊やフクロウなど動物のからくり人形が出て来て、太鼓を叩いたりラッパを吹いたりしていた。
それから、塔のどこかから、しゃぼん玉が吹き出ていた。窓からは真下のローズガーデンを見下ろすこともでき、英国式の庭園の上をしゃぼん玉がふわふわ飛んでいる光景は、絵本の中みたいにロマンチックだった。

見学順路に戻って、次は4階で繋がっている隣の棟、チュダーハウスへ。
ここは全体が昭和にタイムスリップしたような作りになっていて、昔の子供のおもちゃや昭和のスターたちのグッズがぎっしり展示されている。ぶっちゃけ、お菓子には関係ないものばかりだけれど、お菓子屋さんがお菓子に関係ないものをよくこれだけ集めたものだと、舌を巻いてしまう。
チョコレートファクトリーにあった西洋アンティーク食器やチョコレートに関する資料もそうだけど、とにかくコレクションが膨大で、でもコンセプトはきちんとしていて、中途半端なところが全然ない。「ちょっと儲かったので、適当に資料館を作ってみました」という感じではないのだ。
あれだけの展示品をそろえてあれだけの施設を作るには、優秀なデザイナーや建築家やオブザーバーを要しただろうと思う。下手な博物館よりよほど楽しめるのではないだろうか。

建物の中を一通り見終わると、外に出てローズガーデンを歩いた。数種類の薔薇以外にも、いろんな花が咲いていて、一休みできるテーブルと椅子も置いてある。それから、あちこちに無人の小人のおうちがあって、とても狭いけれども子供たちが入って遊ぶことができる。メルヘンだ! 建物に入らずとも、この庭を歩くだけでかなり楽しめる。
一角にある雑貨屋で、私はお土産にローズウォーター(アロマオイル)と紅茶を買った。小樽で買った夕張メロンキャラメルに次ぐ、北海道のお土産第2弾だ。

白い恋人パークが予想以上に面白く、最初は1時間くらいのつもりだったのが、結局パークを出たときには2、3時間が経過していた。
「やっぱり来て良かったねー、堪能したねー」と言いながら、また地下鉄を乗り継いで札幌に戻った。
大通公園を歩き、鳩に怯えながら出店のエビマヨを食べ、噴水の水しぶきを浴びながら写真を撮った。
そうこうしているうち、時刻は3時過ぎ。ビルが立ち並ぶ札幌の街を歩いて、ホテルへ向かった。

札幌での宿泊先はホテル日航札幌。このホテルが素晴らしかった!
入った瞬間、小樽で泊まったホテルとのグレードの違いが一目瞭然なのだ。まぁ、宿泊料金が雲泥の差なので、当たり前なのだけど。小樽では、チェックインすると「勝手に部屋に行ってね。後はお好きにー」という感じだった。そして、ルームキーが今どきカードじゃなくて文字通りの鍵だったり、客室の壁や柱にはところどころ目立つ傷があったり絨毯には染みがあったりした。だからと言って別に何か不満があるというわけでもなく、「この料金ならこんなもんか」と思っていたのだが、札幌のホテルに期待をかけていたことは否めない。
で、ホテル日航札幌。まず、接客態度が全然違う。それから、部屋も全然違う。家具がモノトーンで統一されていて、落ち着いた雰囲気なのだ。私はユニバーサルルームに泊まったのだけど、さすがユニバーサルルーム、バスルームも適度な広さがあってめっちゃ使いやすい! アメニティが充実しているのも嬉しい。
実はこのホテル、私が会社から貰っている福利厚生のポイントを使って泊まったのだ。そうじゃなきゃ、全額自腹ではとても泊まれない。通常なら1泊2万以上するホテルに1人9000円くらいで泊まることができた。素晴らしいぞ、わが会社! ま、給料安い分、こういうところで助けてくれなくっちゃ、有名なグループ企業の名が泣くってもんよ。

さて、ホテルの部屋をくまなくチェックしては「やっぱり(小樽とは)違うわぁ」とニンマリしつつ、少しのんびりしたあと、ホテルの隣にある大丸へお土産を買いに行った。
横浜のデパ地下に匹敵する混み様……。人をかき分け、目当てのお店を渡り歩く。結果、六花亭の「霜だたみ」(サクサクのチョコ味パイで、モカクリームをサンドしたもの)と石屋製菓の「白い恋人」、「グレープフルーツクッキー」、それから昆布をめでたくゲットしたのだった。
これらのものを求めて歩き回っている途中に見つけたアイス屋さんで、ソフトクリームを食べた。私は、期間限定のマンゴーソースがかかったバニラソフト。食べ終わってから、マンゴーって北海道名物じゃないじゃん! ということに気づく。おいしかったから、どこの名物だろうと関係ないんだけど。だって、メロンアイスがなかったし。

夕食は、ホテルの1階にある「カフェ セリーナ プロデュースbyミクニ」で。ここは料理の鉄人・三国清三がプロデュースしているカジュアルフレンチのお店で、旅行の計画を立て始めた頃に「札幌の夜はここ」と決めていたのだった。ホテルの隣のビルに、やはり三国清三プロデュースの本格フレンチのお店もあるけれど、料金も雰囲気も庶民にはちょっと入りづらそうだった。

ディナーメニュー↓
・グラスワイン(白)
・イカのフリットと夏野菜のガスパチョソース
・タラバガニとトマトのミルフィーユ仕立て
・本日のパスタ・・・ベーコンと(たぶん)小松菜のパスタ
・仔羊の香草パン粉焼き(本当はもっと小難しい名前)
・ヨーグルトシャーベットとオレンジのジュレ、パッションフルーツのブラマンジェ(3層になっている)
・パンとコーヒー

驚いたのは、何も言わなくても私にはパンと仔羊をあらかじめ切り分けて持って来てくれたことだ。
パンは、何度でもおかわりを貰え、そのつど種類が違う。私はパンをたくさん食べるとせっかくの料理が入らなくなると思い、最初に出た黒大豆入りのパンだけにした。何度かおかわりしていた母によると、クルミパンもピスタチオ入りも、どれもこれもおいしかったそうだ。もちろん、私が食べた黒大豆入りもとてもおいしかった。
料理も「このお店にしてよかった」と思えるものばかりで、特に仔羊は今まで食べた中で一番クセがなく、食べやすかった。

部屋に戻ると、遠くに花火が見えた。ホテルマンが部屋まで案内してくれたとき、「今日はちょうど花火大会があるのでお部屋から見られると思いますよ」と言っていたのだ。
知っていて札幌に来たわけではなく、偶然の花火大会。大きな窓から見える花火と札幌の夜景を、ほろ酔いの頭でじっと見つめていた。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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