月に舞う桜

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2007年07月19日(木) 北海道旅行:1日目・小樽編

うちの職場では5日間の夏休みがもらえる。連休にしてもいいし、分けて取るのもOKだ。
今年、私は7月に2日、8月に3日取ることにし、夏休み第一弾を利用して北海道(小樽&札幌)へ家族旅行に行ってきた。
北海道は高校の修学旅行以来なので、10年ぶりだ。小樽にも札幌にもそのとき行ったけれど、時間に追われた班行動だったので、あまりゆっくり町を回ることができなかった。なので、今回は行きたいところへじっくり行ってみようと。

朝5時半起床。仕事の日より1時間も早いので眠いのだけれど、旅行のためなのでそれほど苦にならない。
通勤のサラリーマンに交じって電車に揺られ、羽田空港へ。売店で、朝食用に空弁を買う。
電動車椅子は荷物として預けるのだけど、規則が厳しいことと、私が使っている車椅子のバッテリー搭載方法は係員が初めて見るタイプのものだったため、手続きに時間がかかった。考えてみると、今使っている電動車椅子で飛行機旅行するのは初めてなのだ。
新千歳空港行きの搭乗口で出発案内と一緒に表示されている天気情報(天気「予報」ではなく、現在の天気と気温が表示されている)によると、新千歳は思い切り雨マーク。まだ朝なので気温は少しずつ上がるだろうけれど、天気が良くなる保証はない。ちょっと不安になった。せっかくの旅行、雨は困る。

飛行機はほぼ定刻通り出発し、私は機内で空弁を食べた。
私が買った空弁は六角形の容器が二段重ねになっていて、上段には煮物や焼き魚や肉団子などのおかずが、下段には、梅じゃことゴマと細かく刻んだたくあんをまぶしたご飯が入っていた。おかずは全体的に甘い味付けで可もなく不可もなくだったけど、ご飯はおいしかった。
東京と北海道は結構近い。のんびりご飯を食べたりお茶を飲んだりしていると、寝る間もなく着陸態勢に入った。飛行機に乗るのが大学の卒業旅行以来ということもあって、離着陸のときは少々緊張する。

旅行1日目は小樽の日。
空港から小樽までは、JRの快速エアポートで1時間だ。
新千歳を出たときにはどんより曇っていた空も、電車が進むにつれて明るくなり、ときおり青空も見えるようになった。よかった。ぐずついているのは空港周辺だけみたいだ。
北海道はやっぱり広い。土地も空も。札幌は都会でビルがたくさん並んでいるので多少ごちゃごちゃした印象を受けるけれど、それでも、だーっと果てしなく伸びた道路を車窓から眺めると「うぉ、まさに北海道!」と思う。
車両と車両を繋ぐドアの上には、ローカルニュースがテロップで流れていた。「道警」なんていう言葉を見ると、これまた「うぉ、まさに北海道!」と感激する。
札幌を過ぎて少し経つと、右手には海が、左手には山が見えた。私は海の方が好きなので、ひたすら右側を見つめていた。水平線、ごつごつした岩、積み上げられたテトラポット、穏やかな波。

小樽に着くと、ホテルのチェックインにはまだ時間があったので、お昼ご飯を求めて歩いた。
たどり着いたのは、小樽運河食堂。木造でちょっと薄暗くレトロな雰囲気のところに、ラーメン屋さんやお寿司屋さんなど10店ほどのお食事処が集まっている。
その中で私たちは浅草橋ビヤホールというお店に入り、タラバガニとお寿司のセットを頼んだ。新鮮なネタとわさびの利いたお寿司、ぎゅぎゅっと身のつまったゆでタラバガニ、ほぐしたカニの身が乗った茶碗蒸し、カニ入り味噌汁、大葉と大根おろしにイクラが乗った小皿。
どれもこれも「北海道に来たー!」と口いっぱい感じられるものばかり。特に、茶碗蒸しと味噌汁はカニの旨味がよく出ていておいしかった。ゆでタラバは最初はレモンを絞って食べていたのだけど、途中から味噌汁にじゃんじゃん入れてみた。もったいないと思われるかもしれないが、これがおいしさ倍増。

カニで満腹になったあと、小樽運河食堂の一角にあるお土産コーナーで「夕張メロンキャラメル」を購入。北海道のお土産第一弾である。
それから、ホテルへ行ってチェックインを済ませ、荷物を部屋に置いてから、小樽の町散策へ。
日が当たると少し暑いけれど、涼しい風が吹くので心地よい。心配していた雨も、降る気配は全くなかった。北海道は歩道が広いので、概ね歩きやすい。でも、小樽では「ここは歩きやすいが、一本隣の道に入ると歩道が石畳」ということがあって、たまに苦労した。
小樽と言えば、ガラス工芸とオルゴール。目に付いたお店に手当たりしだい入っていって、ずらりと並んだ作品を見て回った。小樽は建物自体が素敵で、メルヘンチックだったり明治時代風情だったりする。中は床が板張りになっていて、人が歩くとギシギシ音を立てるところが多い。
ガラス製品は淡い色合いで、どれもキラキラと輝いていた。流行りなのか、ごく小さいものから中くらいのものまで、カエルの置物が多く見られた。どこかのオルゴール店では、万華鏡を覗くこともできた。覚えている限りでは、人生初の万華鏡。
きれいなガラスやオルゴールは、小樽の町の中に並んでいるからこそ、より一層きれいで魅力的なものに見えるのだろうなと思った。買って帰ってうちに飾っても、埃をかぶるのがオチでして……現に、私の部屋の片隅では、高校の修学旅行で買ったうさぎのオルゴールが鳴らされることなく埃をかぶり、ヴェネチアングラスは、最後に出して使ったのはいつのことやら、という有様。

さて、小樽の町でよく見かけたものの一つが人力車。交差点毎に人力車が客待ちをしていて、多いと一つの交差点に2,3台が待機しているのだ。料金は、どの人力車にも500円と書いてあった。安くないか? あとは、ポニータクシーというのもあって、その名の通りポニーが馬車を引いている。そして、ポニーを引くおじさんは、カウボーイハットを被っているんである。
よく見かけたもの二つ目は、風鈴。ガラス工芸の町なので当たり前かもしれないけれど、お店の中だけではなくて、町なかの、そこらへんに風鈴が吊るされている。ある川(用水路?)には、ロープが何本か張られていて、ロープ一本あたり10個弱の風鈴がさがっている。風流だし涼しげだけれど、風が吹くといっせいに鳴るので少々うるさい……。
が、しかし、小樽で一番インパクトがあったのは、何と言っても昆布屋さんだ。小樽には、ガラスとオルゴールのほかに昆布屋さんがたくさんある。その中の一つの店先に、「お父さん預かります」という看板が! 見た瞬間、私と母は大笑い。父は苦笑い。何で写真取るのを忘れたんだ、私!
女性陣が町を歩き回っている間、お父さんを預かってくれると言うのか。しかし、大変失礼ながら、ただの昆布屋。レストランでも何でもない。女の徘徊は長いぞ。昆布を見ているだけで時間をつぶせると言うのか、恐るべし。「お父さん預かります」なんて、抜群のセンス。お店の奥さんが考え付いたに違いない。
で、小樽の昆布屋さんの看板には、示し合わせたように「七日間食べて鏡をごらん」と書いてある。すごい、まるでシャンプーか、ビリーズ・ブートキャンプの広告!

そんなこんなで歩き回っていると、早くも夕暮れ。ところどころ漂っていた暑い空気は影を潜め、すっかり涼しくなった。やはり北海道は、涼しくなる時間が早い。
ここから、のんびり気分で夕食のお店を探し始めるが、ここで誤算が。まず、あらかじめ候補として挙げておいたお店が、どこもここも階段の先にあったり、せせこましかったりして入りづらい。次に、私たちは皆、お昼に食べたお寿司とカニがまだ胃の隅に居座っていて、本気で夕食を探す気になれない。
そして極めつけは、小樽は店じまいが早い。あとで調べて分かったのだけど、お昼に行った浅草橋ビアホールは、ビアホールであるにもかかわらず8時か8時半までなのだ。
観光地なのに、どんどんどんどんお店が閉まっていき、いつの間にか町がシーンとしている。何てこったい。そのうち暗くなって、すっかり夜。何てこったい。
仕方がないので、とりあえずホテルに戻った。ホテル内のレストランはどうだろうと見てみるも、あまり食べたいものがない上に、高い。しかもこれまた8時とか8時半まで。この時点で、7時半くらい。
その結果、桜井家が取った行動は……家族3人でホテル近くのローソンへ。

ありえん!

北海道まで来て、なぜコンビニ!? ローソンなんて、横浜にもごろごろあるっちゅーねん。

でも、まぁ、さすが北海道と言うべきか、お弁当のご飯にはほぐした鮭がどっさり乗っていたから、まいっか。
母と私は「甘いものがないとダメよね」と言ってイチゴタルトを買い、私は少しでも北海道気分を出すべく、メロンカクテルを買った。このカクテルは千疋屋と提携して作られたもので、横浜のコンビニにも置いてあるものなのだが……。

こんな感じで、小樽の夜は更けていくのであった。

札幌編へ続く。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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