月に舞う桜

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2007年07月21日(土) 北海道旅行:3日目・帰還編

楽しかった北海道旅行もとうとう最終日。あとは横浜へ帰るだけとなってしまった。

この日も、朝食はホテルのバイキング。朝食バイキングも、小樽よりずっと種類が豊富だった(いちいち比べるな!)。
一番おいしかったのは、じゃがいもだ。蒸かしたじゃがいもを、小麦粉をつけて丸ごと揚げてあるのだ。外はさくさく、中はほくほく。まさに北海道の味。
いろんな種類を少しずつ食べようと意気込んでいたのに、ついクロワッサンを食べ過ぎて、気がつくとお腹いっぱいになっていた。残念でならない……。

荷物の大半は、宅配便で送るようにしてあった。身軽になって、「絶対また泊まりたい」と思いながらホテル日航札幌をチェックアウト。
観光客や地元の人でにぎわう札幌駅をあとにして、新千歳空港へ。札幌は薄曇りだったのに、新千歳は雨が降っていた。駅員さんによると、空港周辺は最近ずっと天気が悪いらしい。

飛行機の時間までだいぶあったので、空港内のお店を見て回った。広いのはどこの空港も同じだけれど、新千歳は広い上にとにかくお店が多い。羽田なんて目じゃないと思う。あらゆるものが揃っているので、町に出なくても、空港の中を歩くだけで北海道を満喫できてしまう感じ。
私はその中の一軒で、試食の夕張メロンを一切れ食べた。
なんと、北海道旅行中にメロンを食べたのは、このときが最初で最後だった。北海道に行けばメロンなんてすぐに食べれるだろうと思っていたら、なかなか機会がなく、朝食バイキングにあるだろうと期待したがそれもなく、とうとうこんなことになってしまった。
何事も、積極的に求めなければ向こうから飛んでは来ないのだ、と学んだのであった。

母は、自分へのお土産に「若狭いも」を買っていた。私はずっとスイートポテトみたいなものだろうと思っていたのだが、さつまいもは全く入っていないと知って驚いた。
お店を一通り見たあと、お昼ご飯を食べることにした。
父は一人でラーメン屋へ、私と母はパスタ屋さんへ。私は、タラバガニとほうれん草のトマトソーススパゲッティを食べた。パスタを口に入れた瞬間、磯の香りが広がった。その上、タラバガニの量が半端じゃなくて嬉しい悲鳴。横浜じゃ考えられないくらいの、身の太さと量なのだ。カニ入りパスタを食べて、麺でお腹いっぱいになることはあっても、明らかにカニで満腹になるなんて初めてだった。
こうして、今回の北海道旅行はタラバで始まりタラバで終わったのであった。小樽の夜は思いがけずコンビニ弁当になってしまったり、メロンにありつけなかったりもしたけれど、終わり良ければ全て良し。

食事のあと、帰りは電動車椅子を預ける手続きも比較的スムーズに済み、「あとはのんびり帰るだけ」と搭乗口で待っていた。すると、私たちが乗る飛行機の到着が遅れているとのアナウンス。
同じようなアナウンスが繰り返し流れる中、その飛行機が空港に着き、乗客を降ろし、整備点検をする様子がガラス窓のすぐ外に見えた。
「少しぐらい遅くなってもいいから、しっかり点検してくれ」と祈りながら、搭乗予定の飛行機を見つめる桜井家ご一行様。でも、中には羽田で乗り継ぎをするお客さんもいるようで、私たちみたいに悠長なことは言っていられないようだった。

そんなハプニングもありながら、飛行機は30分ほど遅れて無事に飛び立った。
車椅子の人や小さな子供連れの人たちは、基本的に先に機内へ案内される。空港の係員が私たちを案内して客室乗務員に座席を伝えるとき、「ホテルとキングとジュリエットです」と言った。私たちの席はH、K、Jだったのだ。
ちょっとでもそういう専門用語を聞くと、「おお!」と嬉しくなってしまうミーハーな弓月サン。

いよいよ本当に北海道から離れ、東京目指して飛んで行く。現実逃避はもうすぐ終わり。私の夏休み第一弾も。
旅行が終わるときの寂しさと、ちょっとした安堵感。
飛行機の中でそれを味わい浸っていたけれど、羽田空港の滑走路に飛行機のタイヤがついた瞬間、そんな感傷や余韻は吹っ飛んだ。
だって、暑い! おもしろいくらい、羽田に到着した途端にじめっと蒸し暑い。北海道では全く感じなくてよかった湿気に、思わずげんなりした顔になる。関東の暑さから離れていた分、戦闘体勢が整っていなくてダメージが大きいのだ。
この蒸し暑さは、羽田から電車で横浜へ向かう間ももちろん続いた。
横浜は私が経つ前と同じ顔をしていて、帰るべき場所が何も変わっていないことには安心感を覚える。でも、いかんせん暑い。からっと暑ければよいが、とにかくめちゃくちゃ蒸し暑い。北海道の空気が恋しい……。

ま、とにかく無事に帰ってきたのだ。それでいいし、それが全てだ、と思う。旅行で一番重要なのは、「無事に帰ること」だ。暑かろうが寒かろうが、帰るべき場所はここなのだ。
楽しかったけれど、心残りもある旅行。でも、心残りは旅行の醍醐味。

今回の旅行で改めて分かったことがある。私はやっぱり、田舎より都会向きなのだ。
もちろん、田舎ののんびりした空気や、どこまでも広がる大自然には触れたい。でも、そういうのは、例えば移動の電車の中からだったり、ちょっと1,2時間歩いてみるだけで満足してしまう。あとは、寂しい。町からどんどん人が消えていく夕暮れとか、真っ暗な夜とか。
人がたくさん、邪魔なほど歩いていて、ごちゃごちゃと賑わっていて、油断していたら取り残されるから神経をピッと伸ばして前を向いて歩く、でも、町を彩るお店をちょっと横目で覗くことも忘れない。そんな感じのところの方が、わくわくする。
たぶん、都会の方が整備されていて歩きやすいっていうのが、都会好きの大きな要因だとは思うのだけど。一人で自由に動き回れないところは、好きじゃないしテンション下がる。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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