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21 アキュパンクチャー
2005年05月29日(日)



どこから聞いてきたのか知らないが、シャピュー氏はアキュパンクチャーへ行きたいと言い出した。 謙治はアキュパンクチャーが何であるか知らなかった。 英語に大分自信のついた謙治は、知らない言葉でも前後の関係で大概の言葉は想像ができた。 しかし、シャピュー氏の説明するアキュパンクチャーを謙治は理解できなかったので、めったに無い事であったが辞書を引いた。 「鍼療法」さて困った読めない、何のことか判らないではないか。 身の回りに国語辞典は中々見当たらない。 やっと見つけて引いたら「はり」と読むのが判った。 はり療法、どこへ行けば良いのだ。

このような時頼りになるのが経験豊かな秘書である。 彼女自身は鍼医院を知らなかったが、どこへ聞けば分かるかを知っていた。 そして、松下幸之助氏が上京の折りに良く行っているという自由が丘の鍼医院「クロダ」を見つけてくれた。

シャピュー氏の症状は、肩が凝る、首が痛い、そんなものあったが、クロダの先生には何の説明もいらなかった。 彼は患者を診るだけで、どこが悪いか分かるらしく、さっさと治療に入った。 謙治は、週一回行くことになったその治療に毎回付き合わされたが、実際のところ何もする事はなかった。 「うつ伏せに寝てください」とか「仰向けになってください」「はい、終わりました、洋服を着てください」と言えばよいのであったが、そんな事は先生方も言えたであろう。 謙治は、ただ、5分か10分の不思議な鍼治療を見つめ、先生が部屋を出て行かれると本を取り出して読んでいた。 30分程すると先生が戻って来られ、身体を裏返して鍼を打ち、又、2・30分先生は他の患者さんの所へ行かれる。 謙治は本を読み、シャピュー氏は、ほとんどの場合気持ち良さそうに寝てしまっていた。 1階の大部屋に5・6人が横になって居るのを見たが、シャピュー氏は、特別な料金を払っているとは思えなかったのであるが、いつも2階の個室をあてがわれていて、シャピュー氏には無かったが、謙治にはコーヒーとフルーツが供された。





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