2007年02月07日(水) |
驚きの犬…「クロ」のお話 |
今日は、ウォーキングの途中で出合った、 ミニチュアダックスフンドのクロのお話です。
クロにあったのは、いつものコースを歩いていて、 そろそろ休憩を取ろうかなと思ってる時だった。 私の目の前を歩いていたミニチュアダックスフンドが、 突然、歩道の植木のフチに手をかけて上がろうとしたのだ。
その姿があまりにかわいかったので、 飼い主さんに声をかけたのだ。
「かわいいですねぇ…」 「ええ、元気なんですよ、高いところに 上りたがって…」 「ああ、このフチを歩きたいんですか?」 「そうなんです」
そんな話をしていると、この犬は、 上げてくれと言わんばかりに 飼い主さんをチラチラと見る。
「名前はなんて言うんですか?」 「クロです」
ミニチュアダックスフンドにクロという 名前があまり似合わなかったので、思わず、 こう言ってしまった。
「クロですか?」 「ええ、そうなんです、クロなんですよ。 もっとも私のおばがつけたんですけどね。 男の子だし、クロが言いやすくていいって。 そのおばが2年前に亡くなったので、 わが家で引き取ったんですよ。」 「ああ、そうだったんですか… 確かに言いやすいですね(笑)」
私が「クロ、クロ」と呼ぶと、クロは、 植木のフチに上るのをあきらめて、 コチラにとことことやってきた。 愛嬌があって、とてもかわいかった。
クロをなでなでしていると、 その飼い主さんが、 こんな話をしはじめたのだ。
「この子には、ビックリさせられることが 多くてね…いろんなことがあるんですよ。」 「いろんなことですか?」
私は、とても興味を持ったので、 立ち上がって、飼い主さんの話に耳を傾けた。 飼い主さんの話は、とても感動するものだった。
「実は、おばは、1人暮らしをしていて、 少しぼけて来ていたんです。 何かを言っても、ハッキリしない口調になってたし、 足腰も弱くなっていて歩くのも嫌がるようになっててね。 1人暮らしだし、気晴らしにでもなれば、ということで、 犬でも飼おうと話し合って、気の進まなさそうなおばを 連れて、ペットショップに行くと、おばがすぐに この子を気に入って、即座に決まったんです。」 「気に入ったんですね、クロを?」
「ええ、すぐにこの子って言ってね。 それから、おばは、クロをとても可愛がって、 ボケていたのに、しっかり話すようになって、 散歩もするようになったんです。しゃっきりとして。 みんなで驚きましてね。」 「クロの力ですね。」 「そうなんです。とても元気になって。 ところが、クロを飼ってから、2年後に病気が再発して、 入院することになってしまったんです」 「あらら、大変でしたね。」
「ええ、それで、おばのところにお見舞いに行って、 おばの洗濯ものを引き取って来たんですよ。 病院から帰ってきて、その洗濯ものをカゴにいれて、 それから、クロを探したら、クロがいないんです。 家中探してもいなくてね」 「あら…」
「そしたらね、なんと、 おばの洗濯ものを入れた カゴの中に入っていたんです。」
「私たちには、消毒のにおいしかしないんですけど、 クロにはおばのにおいがしたんでしょうね…。 それから、病院から洗濯ものを持って戻ってくると、 毎回、おばの洗濯ものにくるまるようになって… その洗濯ものの上で寝ているんです。 それを見て、みんなで驚いて…」
飼い主さんは、そう話すとひと息いれた。 私は、黙って聞いていた。
「おばが生きてる間に、一度クロに合わせて あげたかったけど、病院には連れて行けなくて。 その洗濯ものにくるまるクロの写真を撮って おばに見せたら、おばは泣いて… それで、その写真を伸ばして病室に飾ったんですよ」
「おばが亡くなったとき、クロにそのことを 伝えたらね、いつもはほえたりしないのに、 ワンワンって、泣いたんですよ… それにも驚きましたね」
「おばさんが、クロにサヨナラを言いに 来たのかも知れませんね」 「ええ、みんなでそう言い合いました。 それから、うちの子になったんですよ」
クロは、そんなことがあって、 この飼い主さんの子に なったのだ。
クロにかけることばが見つからなかったので、 私は、再びクロをなでなでした。 クロは、嬉しそうにしっぽをふっていた。
私は、話をしてくれた飼い主さんにお礼を言い、 飼い主さんとクロと別れた。
「クロ、うんと幸せね、 おばさんの分までね。」
と私は心の中で思わずにはおれなかった。 でも、今、クロはうんと幸せそうだ。 よかったね、クロ。
今日は、クロのお話でした。
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