言の葉孝

2006年10月03日(火) 話が濃い個人経営者たち


 はっきり言うが、俺は商店街の個人経営の店は到底生き残れないと思っている。特に住宅地周辺は、地域のど真ん中に大きくそびえる安くて品揃えのよいスーパーに客を取られてしまうからだ。はっきり言って個人経営の店に客が回るには人口密度が足りないのである。
 都会に行くと、反対に個人経営というか、スーパーのような多種の品物をそろえる店よりも、中小規模の専門店が増えてくる。町全体がスーパーのようなものであるからだ。

【話が濃い個人経営者たち】

 それはさておき、ここ一週間うちの大学の側にある商店街では大売出しを行っている。そのおまけとして、くじ引き券を配り、俗に言う“ガラガラくじ”を引かせるイベントを行っている。
 その受付の応援に、我々モモサポの面々が交代で就いている。

 受付は基本的に2人1組なのだが、今日のパートナーはバイク屋の奥さんだった。この受付は午前の部だけで3時間半の長丁場になり、それなりの暇つぶし対策が必要なのだが、今回はその暇つぶし対策も無用の長物になった。
 その奥さんは中々話が上手い。

 たとえば、バイク屋さんはバイクを売るだけでは儲からない。バイクの利益はせいぜい一台につき1,2万円なのだそうだ。その代わり、車検や修理などのアフターサービスの手数料で何とか儲けを出すのである。
 また、改造車の修理は断り、暴走族などガラの悪いドライバーの客は近づかないようにしているらしい。値切り交渉などで非常に性質が悪く、接客に理不尽な苦労をするのだそうだ。
 その辺は、俺もデジカメ販売などで必ずといっていいほど値引き交渉をされ、ガラが悪いと無茶を言ってくる客もいたので、少しは共感できる話だった。

 また、バイク屋には「SUZUKI」や「HONDA」、「YAMAHA」の看板が出してある。それは直接メーカーと契約をしてバイクを卸してもらっているという意味なのである。
 パートナーの奥さん――キジさんのお店は「SUZUKI」と「HONDA」のみである。この場合「YAMAHA」などほかのメーカーのバイクは別のバイクショップから間接的に仕入れることになる。

 また、「商売というものは売れるものを売りたいだけ仕入れればいい」という思い込みがあるが、このバイク屋ではそれが通用しないのだそうだ。売れようが売れまいが、契約で決めた台数がメーカーから納められ、売れなくても返品は利かない、つまりその台数はノルマのようなものなのである。
 そして、各メーカーからは世話になっている販売店に時々慰安旅行が企画されるのであるが、成績がいい店と悪い店で待遇が違うという。たとえば、キジさんの場合、その企画で淡路島に招待されたのだが、成績のいい店は一泊二日になるらしい。
 真にゲンキンな対応である。

 店だけの話ではなく、商店街のいろいろな噂話や、従業員の話などさまざまなお話を聞かせていただいた。もともと、出版会に入り、記者になりたかったのはこういう話を聞くためだったりするので非常にありがたい。
 キジさんの立派なところは、「おしゃべりでも人の悪口を言わなければいい」という信念をしっかりと実践しているところだ。確かに人の陰口でも盛り上がれるが、どうにも会話の雰囲気が陰険になってしまうので、人によっては気持ちよく話せない。
 実際、受付を行っている間も次から次へと知り合いがやってきては、キジさんに声をかけていく。人当たりのよいキジさんは、近所づきあいもしっかりしているようだった。

 とにかく商店街に店を構える個人経営者たちは、基本的に昨日の話に出ていた“構築”タイプの人間が多く、若い頃から苦労をしている人もいるので、中身の濃い人生を送っていることが多い。
 先ほど、個人経営店はスーパーに勝てないと述べたが、個人としてはこういう店には生き残ってもらいたい。こういう店の人たちは気さくな人も多く、モモサポの一員として長くかかわってきた俺としては情も移ってしまっている。





web拍手レス(というか、スーパーだけ生き残るのは何かロマンが足りないじゃないか)

 本日はコメントなし。


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