なか杉こうの日記
DiaryINDEXpastwill


2006年01月19日(木) 「まじょの木」坂

今日は用事があって休みを取った。日中町を歩くと住宅街など閑散としていて、陽射しは明るく、家庭にいる奥さんというのはこんな中を毎日暮らしているんだよなーいいなーと思ってしまった。しかしもし自分がそんな境遇に置かれたら、またそれはそれでいろんな悩みが出てくるのだろう、近所とのつきあいとか。

坂を登ったら、枯れ木が三本、からりとした白い空を背景にくにゃくにゃと曲がった幹がシルエットになって映った。「まじょの木」長年わたしが呼んでいた、その木である。あの、指の伸ばし具合。ひねくれていて、年老いた魔女の指先そっくりだ。

実はこれは枯れ木ではなく、冬に葉を落とした木々なのである。はだかで黒く、空に生えている様子はまじょの木と言うにふさわしいのである。

春も夏も秋も、それなりに葉を繁らせうつくしい。この木は。春は、実はさくらなのである。いっせいにピンクの花をつける。夏はあおあおとした葉。秋は黄色くなった葉っぱ。で、冬はこうして、骨だけの、まじょの木になる。

その様子は息をのむぐらいうつくしい。映画の一場面のようである。たいした場所ではないのだ。住宅街の、狭く急な坂をのぼったところが、たまたま背景に何もなく、背の低い木が生えている。それだけなのである。それがシルエットに見えるのである。でも「あ」と感動してしまう。あそこの坂を登る人で同じように思っている人はいるのだろうか。


なか杉こう |MAIL

My追加