なか杉こうの日記
DiaryINDEX|past|will
小都市の銀行ビルの前に、いまだ夜になると木に青いランプが輝く。クリスマスも正月も過ぎたというのにね。今年はこの、幻想的なブルー、紫がかった紺色のようなブルーがはやっているのか、電車に乗っていても街のあちこちに、このブルーのライトを点した木が目に映る。
銀行ビルの前のツリーのランプはほんとうに幻想的で、今日暮れ方バスでそこを通ったら、ちょうど目の下をタクシーが通るところだった。磨き上げたタクシーのボンネットに、上からツリーの紫のランプが無数に映っている。このうつくしさったらない。
たとえていえば、ハリウッドかなあ。着飾ったアカデミー賞受賞した女優が膚もあらわに、ゴージャスな笑みを浮かべてとおる。あるいは稲垣足穂の世界か。
そういえば昨日、空が急にかきくもり、とおい空が白く輝くほか、一面グレーな雲が立ち込めた。ちょうどタクシーに乗っていたのだが、信号の角に八百屋のビルがあり、そのビルの前面が銀色に輝いていた。まるでなにかの啓示を示しているかのようだった。ただの街角の。八百民の五階建てのビルが燦然と輝きだした。そうだ、昔見た「Neverending Story」の中のようだと思った。
こうしたunworldlyな景色は、そこに人間が妙な意味を付け加えなければ意味のあることなのである。たとえばなにかの吉兆とか啓示とか、ロマンチックだわーとか、それは道路っぱたの何か不思議な光景である。夢のなかのようでもある。しかし意味を追求してはおわりなのである。
|