2016年02月01日(月) |
わかれ 瀬戸内 寂聴 |
著者、90歳を過ぎての作品。 多くの人の死に接してきて、書かずにはいられないというお話の数々。 著者自身のことや、これはひと様のお話だろうな、という短編集。 重信房子との面会のことや、吉行淳之介や武田泰淳とのことなど、私らには知りえないエピソードもあったりで面白く読ませてもらった。
〇山姥 会社を潰して10年ぶりに訪ねた大学時代の友人が住む町で新聞配達を始めた。台風が来た日に山姥と言われている老女を助けた。
○約束 白内障になったら国内でも最高と言われる医師に手術してもらえるように、生前の吉行淳之介が約束してくれていた。 その後、加齢黄斑変性症になって再び、その医師に手術してもらうようになって吉行淳之介とのことを思い出して綴った物語。
○道具 義兄の1周忌法要が終わったあとの筆者の想い。 10年も前に用意されていた義兄の遺言には、神具商だった父の仕事道具があった。
○紹興 中国旅行の企画の話のなかで、武田泰淳の「秋風秋雨人を愁殺す」を思い出した。 清朝打倒を志し、刑死した女性革命闘士「秋瑾」と、日本で大逆罪に問われた菅野須賀子とを重ねたのだ。
○面会 国際テロリストとして獄中に捕えられている重信房子との面会の様子、と、 それに先立って弁護をしている女性との関係など。
○道づれ 京都発徳島行きのバスで臨席だったフリーライターとの短い話。
○百合 京都にある老舗の古美術店の長男に嫁いだが、子供を二人産んでから離婚を切り出した。 同性愛者であるからというのが理由だったが、夫は正体を明かさない妻の相手を訝しんだ。 だが、悪質な詐欺にあって古美術店の存亡の危機に夫が失踪したため、二人の子を連れて実家に戻った。
○圏外 初めて持った携帯で箱根からメールしたら圏外と出た。
○わかれ 九十を過ぎた女の画家と四十二歳下の報道カメラマンとの関係。 呑み友達なのか、若いボーフレンドなのか、財力を持つ女は年下の男と安心した関係を持てるということなのか。 恋愛ではない、あるいは逆に恋愛を越えた、かと言ってプラトニックラブでもない空気が流れている。 私も高齢者と言われる年齢に達して、若い男とは決して恋愛には至らないだろうから却って安心して男を好きにってもいいのかも…と思った。
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