読書記録

2016年01月01日(金) 鍵のない夢を見る       辻村 深月

 短編5つ。


○仁志野町の泥棒
小学4年生の時、転校してきた律子とすぐ友達になったが、5年生になったときその律子の母が泥棒だという噂が立った。
そしてそれは事実で、それでもまわりの大人たちは素知らぬ風で生活していたのだ。

○石蕗南地区の放火
36歳の笙子の実家の前にある、消防詰所から出火した。
財団法人町村公共相互共済地方支部に勤める笙子は、共済金の支払もあるので現場の様子を視察するために久し振りに実家に戻った。
その消防詰所での調査には、合コンで知り合いになった同町役場水道課職員大林勇気もいた。

○美祢谷団地の逃亡者
ただの若者の気まぐれで付き合っている男と、思いつきのように海に行ったのだと思っていたら、物語の最後のほうで事の顛末が分かった。
母を殺した男と着の身着のままで海に行ったのだった。

うそはいわない こころにきめて うそをいう
                相田みつお

○芹葉大学の夢と殺人
大学の同級生で付き合っていた男は、工学部教授を殺害して指名手配されていた。男は大学途中から医学部に転向したいと思っていたが、医学部の入試には失敗していて、工学部を卒業することもできないでいた。
それでも男から電話がかかってきて、逃亡先で落ち合った私はこんな状況でも夢に執着する男に絶望した。

○君本家の誘拐
育児と家事に追われる日々で、ショッピングモールの中にある小さな雑貨屋でシュシュを見ていたが、ふと気がついたらベビーカーごと赤ちゃんがいなくなっていた。
ショッピングモールの支配人や警備員を巻き込んで誘拐かもと大騒ぎになったが、夫に連絡しようにも携帯を家に置き忘れていた。
慌てて家に携帯を取りに帰ったら、ベビーカーも泣きつかれた赤ちゃんも家にいた。
赤ちゃんが眠っている間にと、ちょっとのつもりで一人でショッピングモールに出かけていた主人公の育児ノイローゼともいえる錯覚が招いたことだった。



そして・・・タイトルの 『鍵のない夢を見る 』だ。
物語のどれよりも、タイトルが私には一番不思議。












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