2003年08月01日(金) |
天涯の船 玉岡 かおる |
内容 明治十七年、姫路藩家老のひいさまの身代わりになった少女ミサオと、大志を抱いて留学する青年・光次郎は、神戸からアメリカへ向かう船の上で出逢った。留学後ヨーロッパ貴族へ嫁いだミサオと、実業家として成功への道を歩み始めた光次郎は、再会して惹かれ合い、そして…運命の荒波に翻弄された。男はこの女の苦難にみちた人生のために。そして女はこの男との壮大な夢のために。たがいに一生をかけ、並んでここまで歩いてきた。ミサオ。自分は彼にそう呼ばれる女となるために、長い日々を航海してきた船だと知った。どうしてずっと一緒にいられないのか、問うてもしかたのない現実に、せめて今は狂わずにいられることだけが救いだった…。
私感 明治維新で日本が大きく変化していったなかでこんな女性がいたかもしれない、と思う。ミサオ・マルガレータ・ヒンメルヴァンド夫人。 家のために文明開化と称して許婚と別れてアメリカへ行かなければならなかったお嬢様のために 思いもかけず 身代わりとして酒井三佐緒になってアメリカへいった12歳の少女の波乱にとんだ生涯の物語。 子爵夫人となってもそのアメリカ行きの船の中で知り合った桜賀光次郎を忘れずにいたが、未亡人になってからやはり思い続けてくれていた光次郎と再会する。戦争とか子爵夫人としての世間の目を気にしながらも、自分の気持ちと正直に向かい合いながら生きていく。12歳のときに生き別れた妹の子供とも再会して自身は戦後、息子とアメリカに渡り余生を送る。
ミサオは架空の人物だとしても光次郎にモデルはいただろう。かなり読み応えがあって素晴らしい作品だと思う。
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