Promised Land...遙

 

 

マフラー (2) - 2008年01月25日(金)

二年前、好きだったのは中学校の部活の先輩。と言っても、ただの片想いだったけど。
誰にでも優しい人だった。何も言われても、笑っている人だった。
最初の頃はそんな先輩があんまり好きじゃなかったっけ。
頼りないっていうか…、いっつも笑ってるからこそ心の奥じゃ何考えてんのか分かんないって、そう思ってた。

だけど。
そんな先輩を好きになったのは、部活で怒られた時の事。
吹奏楽って一日休むと、一週間分の練習が無駄になるって言うじゃない?だから、ほぼ毎日部活がある訳で。
そうなると、絶対だらける時が出てくる。私は真面目にやってるつもりだったけれど、やっぱりそういう時があった。
そんな時、先輩が怒ったの。
「梓ちゃんはトランペット上手くなりたいんでしょ?ファーストに上がりたいって言ってたよね?サボってばっかりいたって上手くなれないし、良い音は出ないよ」
って、いつもと同じ柔らかい口調で。だけど、少しも笑っていなかった。

先輩の部活に対する気持ちが伝わってきた。この人は優しいだけじゃない。ううん、それが先輩の優しさだったんだと思う。
だって、あの時先輩に言われたから私は目が覚めて、努力を重ねてファーストに上がる事が出来たんだから。

それからだった、先輩を意識するようになったのは。
先輩の姿を目で追ったり、何かかにか理由を付けて先輩に話し掛けた。
先輩はいつも優しく私の話を聞いてくれて、時には頭を撫でてくれて―――完全な子供扱いだとは分かっていたけれど。

先輩に告白しようと思ったのは、好きになってから三ヶ月後の事―――クリスマスだった。
三年生である先輩は三月には卒業しちゃうし、クリスマスはちょうど良い機会かと思った。
私はクリスマスの告白に向けて、マフラーを編み始めたんだ。いつも黒いコートを着ていた先輩に似合うように、グレイの毛糸で。



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