Promised Land...遙

 

 

忘れないで (2) - 2008年01月18日(金)

それでも、時間と子供の記憶とは残酷なもので、小学校に通い始めた私は次第にりっちゃんの事を忘れていきました。
最初の頃は大切な親友を亡くした悲しみから、記憶を封じ込めてしまっていたのかもしれません。しかし、時が経つにつれ現在の友達と過ごす日々の方を大切に思うようになっていったのです。
クラスメイトの事、初恋、勉強や先生の事…。目まぐるしく過ぎていく時間の中で、私はりっちゃんの存在をすっかり忘れてしまっていました。

時は流れて、私が小学六年生になった時の事です。
私は放課後、教室で一人の友人と世間話をしていました。
クラスメイトの事、先生の事、テストの事…、そんな他愛もない話をしている内に幼い頃の話になったのです。
友人は私に問いかけました。

「幼稚園の頃とかさぁ、どんな子と仲良かった?」
「えー?そんなの忘れちゃったなぁ。凄く仲が良い子は居たんだけど、名前もよく思い出せないし…」
私は軽い気持ちで笑いながらそう言いました。友人を見ると、何故か項垂れていて、髪の毛で表情が見えません。

「どうしたの?」
「………つき」
「え?」
「嘘吐き!!奈美ちゃん、ずっとずっと何があっても忘れないって言ったじゃない!!」
顔を上げた友人が鬼のような形相で、私を睨み付けてきたのです。
一瞬何を言われたのか分かりませんでした。口調は友人のものではなかったし、声そのものが友人の声ではなかったのです。もっと幼い子供の声のようで…。
その声にふと思い出したのがりっちゃんの事…、そう、声は確かに私の記憶に蘇ったりっちゃんの声そのものでした。

「な、何言ってるの?」
「忘れないって言ったよね…?大人になっても離れ離れになっても忘れないって…。なのに、私の事忘れちゃったの?酷いよ、奈美ちゃん…!!」
友人はそう言うと、私の首に両手をかけて力を込めました。とても女の子の力とは思えません。
「奈美ちゃんの嘘吐き嘘吐き嘘吐きっ!!」
強い力で首を締められ意識が朦朧とする中、私は最後にりっちゃんの姿を見た気がします。まだ新しいピカピカのランドセルを背負ったりっちゃんが鋭い眼差しで、私の睨んでいました。



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