忘れないで (1) - 2008年01月17日(木) これは、私が子供の頃に体験したお話です。 私には幼稚園の頃、とても仲が良い友達が居ました。 私達が出会ったのはそれよりももっと前です。私の母とその子の母がとても仲が良かったらしく、物心ついた頃から私達を公園で遊ばせていたらしいのです。 子供の頃の事で、その子の名前はよく覚えていません。私は『りっちゃん』と呼んでいました。 幼稚園に入ってからは私とりっちゃんは、何をするのも一緒でした。幼稚園で遊ぶのは勿論、帰ってからも毎日のように遊んでいました。 りっちゃんは内気で大人しい女の子で、幼稚園の男の子達には何かと苛められがちでした。顔立ちはとても可愛い女の子だったので、男の子が好きな女の子の気を引きたくて苛めてしまう、というような対象になっていたようです。 私はどちらかと言えば勝気で、特に幼いの頃は男勝りだったのでよくりっちゃんを守ってあげていました。 私達は本当に仲良しで、悩み事があると私はりっちゃんにりっちゃんは私に相談していました。りっちゃんはどんな悩み(子供の頃なのでそんなに深刻なものはないのですが)も親身になって聞いてくれたし、時には一緒に泣いてくれたり母と喧嘩した時は一緒に謝りに行ってくれたり…。 だから、私はりっちゃんが大好きでした。 ある日、私達は約束を交わしたのです。 「大人になって、何があっても離れ離れになっても、お互いの事を忘れないでいようね」 と。 子供同士の他愛もない約束でしたが、私もりっちゃんも真剣でした。 私達は笑い合いながら、互いに小指を絡ませました。 だけど…、そんな私達の関係は長くは続かなかったのです。 りっちゃんは交通事故に遭い、帰らぬ人になってしまいました。小学校に上がったばかりの頃です。 私はまだ『死』というものが理解し難い年齢でしたが母に、 「奈美、りっちゃんにはもう会えないのよ」 と聞かされ、ただ声を上げて泣き叫びました。 どうしてもう会えないの、と駄々を捏ねても母は何も言わずに俯いて首を振るだけ。 そんな母の様子に、私はよく理解は出来ずとも分かってしまったのです。 もうりっちゃんに会う事は出来ないんだ、と。どんなに願っても祈っても。 -
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