嘘みたいな話(1) - 2007年01月04日(木) 実際さ、有り得ないと思うんだねー。江戸時代じゃあるまいしさ。 不況だの格差だのと言われているけれど、比較的平和な現代日本で。 十六歳のうら若き乙女が着物着て髪結い上げて、お見合いなんてさ。 事の発端は、一週間ほど前のパパの言葉からだ。 「葉月、今度の日曜日に見合いする事になったから準備しなさい」 一瞬パパが何を言っているのか分からなかった。 見合い?見合いってアレ?着物着て、懐石料理とかの料亭で『ご趣味は?』なーんて聞かれるアレ?相手が剥げたおっさんだったり、マザコン男だったりするアレ? 「見合い〜!?嘘でしょ!?私まだ十六歳なんだけど!?」 「パパが嘘を吐く訳ないだろう。相手はパパの会社の取引先の社長の息子さんだ。二十六歳だから、結婚相手にはちょうど良いだろう」 今時女子高生が親の為に政略結婚とかって聞いた事ない。漫画か小説の世界だっつの。 「嫌、私行かない。日曜は友達と遊びに行く約束あるし…」 「駄目だ、大事な用事があると断りなさい」 「学生の身分で、人生の大事なパートナーを決める気ないから」 「何を言っているんだ、こういう事は早い方が良いに決まっている。パパだって、出来ればお前を嫁にやりたくないんだ。だけどお前の為を思い、涙を堪えてだな…」 …何言ってんの?意味分かんない。嫁にやりたくないんなら、やるんじゃねーよと言いたくなるのは私だけか? 駄目だ、この人と話していても埒があかない。 私との思い出だの、どんなに私を思っているかだのをくどくどと喋り出したパパを置いて、私は部屋を出た。 「あら、本当よ?葉月ちゃんは今度の日曜日、お見合いするのよー」 のん気ににこにこーと言われても…。ママの方がまだ話が分かると思った私が間違いだったか? 「マジでぇ!?ていうかこのご時世、親が決めた相手と…なんて有り得ないって!」 「葉月ちゃん、お言葉が悪いわ。女の子なんだからおしとやかに、ね?」 あーもう、ウチってそういうところが考え方古いのよ。…っていうか、人の話聞けよ。 「んな事分かってるから!だから、華の女子高生の私が今度の日曜に見合いってどーゆー事な訳!?」 「それはね、今度の日曜日が『大安』だからなのよ」 にこにこ微笑むママ。論点がズレてる。何で今度の日曜なのかなんて、どうでも良いし。 NEXT -
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