始まりの合言葉(1) - 2007年01月02日(火) 恥ずかしいなんて思っちゃいけないんだろうけれど…。 恥ずかしいって思っちゃうんだもん、仕方がないじゃない。 「ぃ、いら、しゃいま…せっ、こんにちは…」 私はついこの間から、ファーストフードのお店でのアルバイトを始めた。一ヶ月くらい経ったかな?なのに、今だにちっとも慣れない。 内気な性格の上に、アルバイト経験が全くない私には、『いらっしゃいませ』と挨拶をするだけでも恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがない。 今までそんなに大きな声を出した事ないし、『いらっしゃいませ』という言葉自体が私には似合っていない気がする。 だから、私は小さな声でしか『いらっしゃいませ』を言えなかった。その所為で、毎日のように上司に怒られていた。 どうして皆、普通に言えるのか分からない。 恥ずかしくない?お客様にからかわれたり、笑われたりしない?無視とかされたら傷つかない?―――色々考えてしまう。 私ってこの仕事、向いてないのかなぁ…。辞めちゃおうかな…。 「いらっしゃませ、こんにちは!」 私の背後からはきはきして元気の良い声が聞こえてくる。先輩の園村さんだ。 いつもきびきび動いて手際も良いし、元気も良くて笑顔もあって…、ファーストフードのお姉さんってああいう人の事言うんだろうなぁ…。 私のような後輩の人達には時々厳しいけれど、いつもは優しくて丁寧に仕事を教えてくれる。 辞める前に園村さんに聞いてみようかな…、どうしたら大きな声で挨拶出来るのか。 あの人だったら、私の問い掛けに答えてくれるかもしれない。 「『いらっしゃいませ』って言うのが恥ずかしいって?」 「はい…、すみません」 私はバイトが終わった後に、園村さんに少し時間を貰って相談してみた。 本当はこんな事言って怒られるんじゃないって、ビクビクしてた。 だけど園村さんはちっとも怒ってなくて、苦笑しながら言葉を続ける。 「最初はねー、やっぱり恥ずかしいよね。仕事以外の場所では使わない言葉だしさ」 「…園村さんも最初は恥ずかしかったんですか?」 「そりゃそうよ。大きな声で言えなくてさー、何度上司に怒られた事か…」 あんなに仕事出来る園村さんもそうだったんだ…、私と同じだったんだ。 NEXT -
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