墜落天使 3−1 - 2005年04月09日(土) どうしてこんなことになったんだろう―――今更ながら、本当にそう思う。 昨日、空から落ちてきた天使は、俺の家に住みついた。 有り得ない話だ、俺が他人と暮らすことになるなんて。 しかも、天使の言い分がいまいち分からない。 俺が求めているものを探すだって?そんなもん、なかったらどうするつもりなんだ? 俺は心の奥で何かを欲しがっているんだろうか―――俺ですら分からないと言うのに。 今、天使は俺の兄貴のベッドで眠っている。よく眠っているようなので、起こさずに俺は家を出た。 家から出ないようにと、置き手紙を残してきたから大丈夫だろう。食い物も十分あるし。 俺は学生でこれほど良かったと思ったことはない。学校がなきゃ、四六時中アイツに監視される所だった。 学校にいる間だけは、俺はいつもと同じ日常を過ごすことが出来る。 そう思うと、1日中でも学校にいたい気分になる。特にすることもないんだが。 俺はアイツのことが嫌いなんだろうか…?―――ふとそう思った。 …嫌いではないと思う。アイツが普通の人間だったなら、きっと不必要に避けたりはしないだろう。 俺は平凡が好きなんだ。つくづく地味な男だと思う。 そんな自分を変えたいとは思わない。だから、アイツが傍にいない空間にほっとしているのかもしれない。 小さな道路の角を曲がると、いつもと同じようにマナの姿が見えた。 「おはよう!トオル」 「おう」 マナは俺の幼馴染だ。幼稚園の時からのクサレ縁だが、まさか高校まで同じになるとは思わなかった。 俺と違って、活発でポジティブな女だ。くりくりとした大きな瞳が可愛いと、学校で評判の美少女だったりする―――毎日会っている俺はそうは思えないんだが…。 偶然なのか、それともここで俺を待っているのか、マナとは必ずこの道で出会う。 いつも通り俺達は並んで歩き出した。 「どうかした?なんか憂鬱そうな顔ー」 「…よく眠れなかった」 変なヤツと一緒に暮らすことになったこととか、ソイツが何か面倒を起こすんじゃないかとか、どうすれば帰ってくれるんだとか考えて。 「ふーん、英語の単語テストの暗記してたの?」 「してない…、忘れてた」 いや、正確には今日テストがあるなんて、今知った。 教師の話なんて、いちいち聞いていない。 「やっぱりねー、トオルのことだから覚えてたってやんないでしょ?いいわよね、やんなくたって満点取れちゃう人は」 「別に良くないだろ。満点取った所で、賞金が出る訳でもないし…」 「内申ってもんがあるでしょー!?もうほんっとに無関心なんだから」 悪かったな…。内申が良くなった所で、何だって言うんだ?よく分からない。 続 -
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