墜落天使 2−3 - 2005年04月07日(木) 「とりあえず…、寝る時はこの部屋を使え」 案内されたのは、ベッドや机、本だななんかがある部屋。誰かの私室っぽいけれど…。 「誰が使ってるんじゃ…?」 「兄貴の部屋だ。もう結婚して家を出てるから、使っていない」 ふーん…、お兄さんがいるんだ…。 それから台所やトイレ、お風呂場を案内してくれた。 「あんた、物食ったり、トイレに行ったりするのか?」 「はい、こっちの世界にいる時は、人間と殆ど変わらないんです。そうじゃないと人目がある所では変ですから」 翼がなければ姿も人間と変わらないから、誰も天使だとは思わないんだ。 「そうか。まあ、腹減ったら冷蔵庫にある物、勝手に食って良いから」 「はい。あの…、ご両親はどちらに?」 この家には今、彼以外誰もいないみたいだけど…。 「ああ、父さんは仕事。忙しくて、この家には滅多に帰って来ない。母さんはいない」 「いない…と言いますと…」 「十年前に出て行った。父さんは家庭を顧みない人だから、寂しかったんだろ」 「そう…ですか」 なんかケロっとして言っているけれど…、こんなに大きな家に一人ぼっちじゃあ彼だって寂しいだろう。 彼のその性格の原因は、ご両親の愛情不足にあるのかもしれない。 「あのっ、僕のことは兄と思って良いですからねっ。少しの間だけど、一緒に暮らすんですかね」 同情してるみたいな言葉だけど…、それだけじゃない。 彼の為に何かしてあげたいんだ。少しの間だけでも、寂しさを紛らわせてくれればそれで…。 僕の言葉に、彼は吹き出した。お腹を抱えて、肩を震わせている。 「な、何で笑うんですか!?」 「何でって…、“兄”とか言うなよ。どっちかって言うと、“弟”だろ?」 「な…!酷いですよ!僕の方が年上なのにっ。何百年生きてると思ってるんですか!…って、僕も自分の歳なんて覚えてないけど!」 む〜、確かに僕の方が背が低いし、小柄かもしれないけれど…。 しょうがないじゃないか!天界じゃある一定までいくと、成長が止まっちゃうんだから。 彼はまだ肩を震わせて笑っている。 初めて見た笑顔に、僕は鼓動が高鳴っていた。 どうしたんだろう…、僕。何だか変かも…。 熱くなった頬に気づかれたくなくて、僕は怒っているふりをして彼から目を逸らした。 了 ***** とりあえず一緒に暮らすことになっちゃいましたよってな展開です。 一日で書いたくせにまたしても、昨日と今日で分けました(笑) 番号通り読んでくれれば…、大丈夫ですから; とりあえずギャグがメインなのか、シリアスなのか分かんないですよねぇ。 -
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