墜落天使 2−2 - 2005年04月06日(水) 「帰る…方法は、本当にないのか?」 「はい」 「俺が求めているもの見つけるまで、ここにいるって?」 「はい」 僕はこの時、一つ嘘を吐いた。 本当は緊急事態に、帰る方法が一つだけあるんだ。 それは天使長に連絡を取ること。 初めて出会った人間がどうしようもないくらいの極悪人だった場合、願い事を叶えるのに時間がかかり過ぎる場合とかは、天使は天使長に念で帰りたいということを伝えることが出来る。 天使長はそれが本当に緊急事態なのか判断して、OK出れば天使長の力で翼を出してもらえるんだ。 今回のケースは多分前例にないから、どうなるか分からないけれど、試してみる事は出来る。でも…。 この人は悪い人じゃない。むしろ良い人だ。ただ欲がないってだけ。 だから、僕はこのまま帰る気にはなれなかった。この人を幸せにしてあげたいって思った。 この人は多分幸せがどんなものか、知らないんだ。いつも幸せと不幸のちょうど真ん中にいて、その場所以外を知らない。だから、欲がない。 でも、心の中ではきっと何かを望んでいる筈。 僕がそれを見つけてあげる。幸せがどんなものか、教えてあげる。 だから…。 「…分かった」 彼はもう一度深い溜息を吐いて、迷いに迷った末に頷いた。 「良かったー、追い出されたらどうしようかと思いましたよぅ。あ、自己紹介がまだでしたね、僕シズクって言います。貴方は?」 「早瀬 透」 「ハヤセさん」 「透でいい」 「分かりました、トオルさん。宜しくお願いしますね♪」 僕が右手を差し出すと、彼は少し眉を潜め、それでも僕の手を握り返してくれた。 「…家、案内するから」 「はい!」 僕ははりきって、彼の後についていった。 続 -
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